電動式の日常、そのひとつ
主人公は少年じゃありません
静まり返った通りにメトロノームより規則正しい足音が響く。薄く積もった砂を煙に変えて、飛行機雲のように足跡が伸びる。空に浮かぶイルミネーションはいつもの倍の速さで少年の頭上を通り過ぎていく。
深夜二時、丑三つ時に、しかし満たされない齢十四歳の少年は駆ける。描写もされない背景とはあまりに似つかない道具を肩から提げて、前だけを見てひた走る。
メトロノームが数刻を打つ前に、目的地へと辿り着いた少年は立ち止まった。藁や木ではないとはいえ、オオカミが攻めて来ても壊れない、などとは楽観視できないような風貌の家、いや空間へと続く扉を叩く。
「もしもしー? 宿題やってきたよー?」
二度、三度、そこからは数えることをやめ、突き破りそうな程に扉を叩き続ける。数分もしないうちにガチャという音がすると同時に、外開きの扉は勢いよく開け放たれた。位置的に少年の顔面を強打する形で。
「――――――っ痛」
「うるせえ」
ボロ家の住人はそれだけ言うと乱暴に扉を閉めた。この調子では数日もしないうちに外から中が覗けるようになっているだろう。
さて、ここで一旦ここに至るまでの経緯を話しておこう。たった今、無駄に丈夫な鉄扉で顔面を強打された少年は透。彼はボロ家の住人、天裏表に課された宿題を終了させたためそれを報告に来た、という次第だ。ちなみに夜も更けに更けたこの時間帯に人を叩き起すことに関して、無垢な少年は何も感じてはいない。
さてどうしようか。既にここまで来てしまっているため、一度帰って、というのは流石に手間だ。だからといって、もう一度平たい凶器で殴られたいとも思わない。ならばこうするしかないだろう。
そこまで考え至って、少し下がると透は与えられた『宿題』をその手に構える。むき出しの銃身に許可も取らずに備え付けたスイッチを弾く。すると闇に同化していた黒一色に青い光のラインが走る。肩と手で挟むようにして狙いを固定する。少年は銃身に頬を当てつつ、エネルギーが充填されていくのを肌身で感じ取った。
「スリー……ツー――」
虫の羽音よりも小さな声でタイミングを計り、スコープを通して鉄扉の鍵、デッドボルトを見つめる。
「――ワン……」
急ぐ必要は無いが急ぎたいのだ。これには試し打ちの意味も兼ねられている。それにどうせ壊れるなら今壊してしまっても構わない。この程度で壊れないことくらい、透には分かりきっているのだし。
「……ファイア」
同時に引き金にかかった人差し指を軽く引いた。正しい挙動で正確な軌道で小さな鉛は弾けた音と共に鉄を真っ直ぐに貫いた。――成功した。
知らぬ間に少年の体内でわだかまっていた緊張が一気に解れる。そういえば今、この瞬間まで一度も試し打ちをしていないかったことに気がついた。不思議なこともあるものだ。
満足気にスイッチを切って銃身を闇に同化させる。元通りにそれを肩にかけると少年は扉を引いた。しかし頑丈な薄い板はビクともしなかった。
「え?」
完全に勝ったと信じ込んでいたため、あまりの衝撃に呆然と立ち尽くす。
まず初めに彼はデッドボルトを確認した。手元が狂った可能性を考慮したのだ。しかし幸か不幸か、その心配は空回った。
ならば残る可能性は一つ。今破壊したところ以外にも錠のかかっている場所がある。
といってもそれがどこか分からないため、少年は顎に手を当て、思考をめぐらせる。天裏ならどこに錠を付けるか。しばらくの間そうした後、彼は諦めて息を吐いた。
鉄扉から数歩分距離をとると、またも銃身を構える。分からないなら全部まとめて吹っ飛ばしてしまえ。ヤケだった。
自分自身が吹き飛ばされないようにしっかりと片膝をつき、静かにスイッチを親指で弾く。青い光が闇を照らし出す。そのままか細い指で回転式のダイヤルを回すと光は赤に染められた。
少年は不規則に明滅する原色のレッドを後目に自身の半分ほどもある狙撃銃を正確に構える。先程以上にしっかりと固定して、スコープを通して今度は鉄扉全体を見据える。
「スリー、ツー……」
重心を深く沈め、足と大地を一体化させる。地中に根を張る木のように、もはや自分でも境目がわからなくなるくらい、深く。
「……ワン――」
囁くように呪文を唱える。
「――ファイア」
引き金を引いた。
カチッという歯車の回る音だけが虚しく響いた。
彼は完全に光を失ったガラクタを見つめて言う。
「――充電切れかあ……」
エネルギー――バッテリーの切れた充電式狙撃銃はこうなってしまえば言葉の通りの無用の長物。ただ幅を取るだけのガラクタ。そんなガラクタを首にかけながら少年はため息をついた。
「失敗じゃん……」
午前八時、青年は目を覚ます。
彼の名は天裏表。趣味で技師をやっている。所謂エンジニアだ。
日が差してからだいぶ時間の経った時刻に目を覚ますのは、既に彼の中で習慣として確立されていた。いつも通り。平穏な日々。気だるい朝。
天裏は窓の外に見える無駄に明るい太陽を軽く見やった後、はっきりしない視界を手で拭った。十分に体を伸ばすと、全身に血液が行き渡って心地がいい。一瞬、二度寝しようかとも思ったがやめておいた。これだと退屈な夜をぼーっと過ごすことになりかねない。それだけはゴメンだ。彼は退屈が嫌いだった。
少し体勢を変えるだけで軋んだ音を立てるベッドに軽く苛立ちながらも、彼は立ち上がり、外と中を繋ぐ鉄扉に向かった。一番手頃な位置にあったはずの錠はいつの間にか無くなっていた。なぜ、という疑問は持たなかった。答えなんて選択する余地もない。軽く舌打ちしながら足元と頭上にある錠を外して鉄扉を開けた。
日光を全身に浴び、ポストでも確認しようかといったところで視界の端に異物が混じった。外開きの扉のすぐ横。物騒にも狙撃銃なんてものを抱えたまま眠る少年が、そこにいた。
驚いて声を上げそうになったが、すんでのところでそれを飲み込む。今ここで声なんて上げようものなら厄介事を起こしてしまう。触らぬ神に祟りなし。ゆっくり寝かせてあげるのが一番だ。幸い、例のごとくポストには何も入っていない。仕事の以来も借金の催促もない。というわけで若干呆れつつ、扉を閉めようとする事なかれ主義者天裏。
しかし人生そう都合よくいかないもので。閉ざされかかった心の隙間に眠っていたはずの少年の腕がねじ込まれていた。
「おはよう、先生!」
寝起きとは思えないほどの晴れやかな顔でそう呼んできた。
と言っても先生などと呼ばれようが、天裏には少年に構う義務は無い。若干の罪悪感に苛まれながらも無理矢理扉を閉ざそうとする。しかし、やはりと言うべきか少年はそれを許さない。
「見て見ぬふりっていうのは僕が世界で一番嫌いな行為だよ」
「俺はそんなお前が一番嫌いだよ」
「ヒュー」
経験上、何を言っても軽く流されることを天裏は十分に心得ている。なので無駄な足掻きはしない。出し惜しみせず、本題から入る。
「おい、この穴、なんだ」
言いながら今は無きドアノブと鍵穴を指す。
言われるがままに透はそちらへ目を向けたものの、何事も無かったかのように目を逸らした。
「今日は珍しく天気がいいね」
「……せいぜい自己嫌悪に苛まれろ」
そして何事も無かったかのように扉を閉める。しかし、やはり狼少年はそれを許さなかった。一体天裏は何をしたというのだろうか。
「待って、待って先生! これ、これ見てよ! 言われた通りやってきたから、宿題!」
無理矢理に体を半分以上も鉄扉の隙間にねじ込んできた少年が抱えている凶器を一瞥して、天裏はため息をつく。
「なんだよそれ」
「電磁式狙撃銃第九番」
「物騒な単語並べられてもわかんねえんだよ。結局なんなんだよそれ」
「電気を溜めたあと、それを何倍にも増幅させてその反動で銃弾を射出する装置だよ」
「聞いてねえよ。なんでんなもん持ってきたんだって聞いてんだよ」
「……? 宿題」
あまりにも純粋に当然のことのように言うので天裏は多少面食らってしまった。間違いに自分で気づかせる、ということは教育において大事なポイントだと聞いたことがある。誰が言い出したんだそんなガセ。そもそも自分で気づく気配が微塵もない奴は諦めろとでも言うのか。
相手はまだ若い。若いが故に少し間違ってしまっただけだ。そう自分に言い聞かせながら、天裏は諭すように対話を試みる。
「あのなあ、俺はお前に『壊れた狙撃銃を直してこい』って言ったんだよ。直すっていうのは元あった状態に戻すってことだ。誰も改造してこいなんざ言ってねえんだよ」
とっくに体を中に滑り込ませていた無法者は若干萎縮した様子で返す。
「でも、先生は奴らぶっ飛ばすためにこれ直させようとしたんでしょ? じゃあ、最初からこれくらいの破壊力は持たせた方がいいと思って……」
「……はあ、ああもう、わかったよ。透、何度も言うけどな、俺の事を先生って呼ぶな。呼ぶなら呼ぶで敬語使え」
透が何を考えていたか、それを完全に理解した天裏は呆れた調子でベッドに腰かけ、音を立てる。ちゃんとした目的があって、それに基づいて行動しているのなら、彼にそれを否定することは出来ない。その非難はいずれ自分の喉元を引き裂きかねないのだから。
「で? 出来は? 百点満点中? ちゃんと確認したか?」
ぱっと表情を明るくして無邪気な少年は楽しそうに答える。
「それはもう、申し分ないくらいの百点満点! 確認は……さっきしたよ」
「ふーん」
適当に相槌を打ちながら、天裏は透から物騒な狙撃銃を取り上げる。抱えるレベルのそれをジロジロと舐め回すように見た後、悪意を込めて問う。
「そういえば俺もその確認跡見てたっけな。なあ、そうだろ?」
「……どうですかねー」
「――いくら自分のことが嫌いだからって、変なことは考えんなよ」
「大抵の人は、例外的に自分のことは無条件で好きなものなんじゃないかな」
「くそナルシスト」
吐き捨てると同時に、狙撃銃も少年に向けて投げ捨てる。
上手いことそれを受け取ると、透は話を戻しにかかる。
「で? 先生から見れば、どう?」
「まず、自分の作ったもんが傑作だって思うんだったら、百点満点でも一万点って答えろ。百点満点ってのは出来が微妙だった時に客の前でだけ取り繕う時の点数だ」
「何その最悪な自論」
「出来は悪くないんじゃないか? そのサイズでサージなんてレベルの電力出そうと思えば、一瞬で回路焼き切れそうなもんだけどな」
「そこは上手いことやってるから問題ないよ。先生にも色々教わったしね」
先生と呼ばれた男は居心地悪そうに首を回した。彼はため息混じりに言葉を紡ぐ。
「そんなこと教えた記憶ないんだけどな……」
「そうだっけ」
「そうだった。どっちにしろ、そんな莫大な電力どこに溜めてんだよ」
「そんな溜めてないよ。使う直前に増幅させてる……ってちゃんと聞いてた?」
「聞いてねえって言ったの、ちゃんと聞いてなかったのか?」
「ああ、まさかそういう意味だったとは」
「勉強不足だな。消尽しろ」
「漢字違うよ。え? 死ねってこと? そういうこと?」
「ちげえよ間違いなんていくらでもあんだろ。そう悲観的になるなよ」
天裏がそういうと透は不貞腐れたような声を上げた。雑にからかわれている現状に腹が立ったらしい。当たり前だ。
ろくに掃除もしていない汚れた床に透は身を投げ出す。ショートカットの茶色がかった黒髪に少量の砂と埃が混じる。
「まあ、だとしてもバッテリーの容量の問題でそんなに持たないけどね」
「まあ、一撃で仕留められるレベルの火力が出せりゃあ十分だろ。連発できないんなら出し惜しみすりゃ良いだけだ」
「そんな上手くいかないでしょ」
「フォローしたんだけどな。喧嘩売ってんのか?」
無駄な軽口は聞こえなかったらしく、少年は部屋を見渡して率直な疑問を投げかけてくる。
「ねえ、先生は何を作ろうとしてるの?」
部屋のあちこちに散乱しているガラクタの数々には目もくれず、ただ一点だけを見つめて、そう問いかけてきた。天裏も同じ場所に視線を移し、目を細める。
「良いだろ」
「え、まあ。いいんじゃない?」
「お前、あの良さがわかんねえのかよ……。男のロマンだろうが」
「いや、知らないけど」
今世紀最大級のため息をつきつつ、男は重い腰を上げた。その足でロマンの前まで歩く。
機体に片手を置き、背後から向けられる訝るような視線を感じ取りながら、背中で語る。
「……………………は?」
無粋だな、と思った。だがいちいち説明するのも腹が立つ。いつの間にかため息は彼の常套句になっていた。
「バイクだよ。その辺に転がってた骨董品を改造した完全オリジナルの、な」
天裏が軽くキメると、少年はあぐらをかいて、
「バイク……でも、そんな古いやつ使わなくても、最近のやつ使えばいいんじゃないの?」
「それがロマンってやつなんだよ……わかんねえかなあ」
困り故に唸りながら天裏は首を回す。
しかし一向にロマンがわからない子供はまるで天裏がおかしいとでも言いたげな瞳を向けてくる。そんな調子で何の悪気もなく残酷な言葉を放ってしまうのだ。
「いくら先生の腕があったとしても、そんなオンボロじゃろくに動かないでしょ? 軽く見積っても百年くらいも昔のやつには、骨董品なんて言葉荷が重いよ。せいぜいガラクタ、下手すりゃゴミだよ。僕でも元の状態に『直せ』るかどうか……」
「あ!? 今てめえこれのことゴミって言ったか!?」
悪気がなかろうと悪意が混じらずとも、人の逆鱗を刺激するには十分だった。唐突な叫び声に完全に意表をつかれた透はあぐらの状態のまま肩を跳ねさせる。
「ご、ごめ――」
だが謝罪は届かない。早合点で天裏は声を一層荒らげる。
「ああ!? いいか? こいつはゴミなんかじゃねえんだよ!」
「だから謝ってんじゃん!」
言われてハッとし、ようやく暴君は頭を冷やす。
「……悪かった」
「別にいいけど――」
誰かの癖がうつったのか、むくれた子供はため息をつきながらまたも寝転がる。四肢を完全に投げ出したその姿はさながら人形だった。
「いくらなんでも戦前のやつ使わなくても……」
「戦前が一番いいんだよ。正確にはもう少し古いんだけどな。その頃のやつが一番雰囲気が良い」
「雰囲気……ロマン?」
「そう。それがロマン」
「へー」
興味が失せたのか少年は天井をじっと見つめる。実際にはなにか別のものを見つめているのかもしれないが。
骨董品と機械好きの平凡な技師は特製のバイクに腰掛ける。彼は物を修理する楽しみから骨董品が好きになったのか、古い物を直しているうちに機械が好きになったのか、もはやそれは彼にもわからない。どうでもいい。そんな男は新し物好きの現代っ子に独り言にも似た調子で話しかける。
「これも完全電動に改造したんだけどな」
「え?」
いとも簡単につられた少年は目を輝かせる。
「光る?」
「ところどころな」
身を起こして、なんなら若干前のめりになって少年は食い入るようにバイクを見つめる。
「触っても――」
「汚ねえから却下」
そう言うと返答に大きめの舌打ちが聞こえた。しかし天裏にも譲れないものがある。どうせ使ってたら汚れるのだとしても、使う前から汚すのは心のどこかで拒否反応が起きるのだ。
「銃火器取りつけるのは?」
「ダメに決まってんだろふざけてんのか」
「ふざけてんだよ?」
「ふざけんな」
「――速度はいくら出るの? 動作確認はした? せめて乗るだけでも……」
「却下」
何をされるかわかったもんじゃないので、ハンコを押されるはずもなく書類は破き捨てられる。
「まだ実際に走らせちゃいねえよ。速度がどこまで出るのかは、やってみないとわかんねえな。バイクなんて詳しくないし」
「え? どうやって直したの?」
「手癖」
「バケモンかよ」
尊敬とか通り越して引き気味に言われると心にくるものがある。とはいえ、『バケモン』なんていう称号をつけられるのはまだ早いのだ。ちゃんと動くのかどうか判然としないのだ。シュレディンガーの猫とまではいかないが、失敗する可能性も十二分にあるのだ。まだ喜ぶのは早い。まだ戦えないかもしれない。
あっ、と声を上げて、なにか思い出したらしい透は部屋を見渡す。その後、一直線に発電機に向かうとプラグを挿して狙撃銃と繋げた。
「危ない危ない。充電切れてるんだった」
「いくら電動なんてカッコつけても電気が無けりゃ途端ただのガラクタだ。そこら辺の石っころの方が実用性ある、なんて悲惨な状況にだけはならないようにな」
「了解でーす」
その返事に引っ掛かりを感じて少しムッとする天裏。そんなどうでもいいことにいちいち突っ込んでいては何も話せなくなりそうなのでその引っ掛かりは無理矢理飲み込んだ。先生と呼ぶな、なんてカッコつけても根っこの部分はどうしようもない。だから人間は表面だけでも取り繕うのだ、なんてカッコつける。
無垢な少年は振り返って言う。
「すぐにでも実行に移せるってことでしょ?」
「話聞いてたか? もし失敗していたら、を考えろ。足も無しに無謀な特攻したって返り討ちになるだけ。わかるだろ?」
「でも失敗しないでしょ? ねえ、先生」
「はあ、期待しないくらいに期待してろ。今日色々いじくるから。最後の調整と、動作確認。お前はもう帰ってろ」
「えー付き合うよ。暇だし」
「バッテリーでも作ってこいよ」
「えー」
文句は言いながらも納得はしたのか、透は外へと向かった。途中で振り返って天裏に告げる。
「第九は置いてくから、充電しといてね」
「あー、好きにしろ」
「そう、じゃあもう一つだけ」
少年は笑って最後に問いかける。
「そのバイク、もし成功してたら何点?」
「確証は無いが、きっと成功する。そんな気がした」
「百点満点中」
「一万点だよ」
「そっか」
満足したのか少年は穴の空いた鉄扉を押して外に出た。
「それじゃ、先生。また明日」
「ああ」
すぐに出入口は塞がれ、透の姿は見えなくなった。天裏は骨董品に腰掛けたまま、車体を撫でる。
「ごめんな、透。こんなことに巻き込んじまって」
彼の独り言は誰にも届かずに消えていく。機械では悩みの相談には乗れない。しかし相談に乗れなくとも気分を晴らすことくらいならできる。
天裏はバイクの電源を入れる。途端、命を吹き込まれた最新鋭の遺物はその車体に黄色いラインを走らせる。完全電動は静かだった。まだ修理中の方が騒々しかった程だ。
平凡な技師は地面に転がっていたスパナを拾い上げる。そのままこれを粉々に破壊してやろうか、ふとそんなことを考える。足が無ければ勝ち目は無い。諦めがつく。
しかし彼にはそんな残酷なことは出来なかった。不甲斐ない自分の顔が綺麗に磨かれた車体に反射して反吐が出る。あんなことを言っておいて、結局自己嫌悪に陥るのは決まって自分なのだ。
「ごめんな。こんなくそみたいなことに巻き込んじまって」
深い深いため息は心の腐った部分を吐き出せるようで気が楽になる。こんな意味の無い妄想はやめてしまった方がいい。――戦争なんて馬鹿馬鹿しい。
彼は空いた手でバイクを殴った。力なんてこもっていないから音もでなければ痛みすら感じない。自己嫌悪。
「国家転覆なんてもんに、巻き込んじまってよ」
ありがとうございました
なんかあーって感じでやってたらこんくらいの期間が空いておりました近衛です
機械も銃もバイクも詳しくないよなんでこんな設定になってんのほんとにどうなってんの誰か助けて近衛です
語尾ではなくヒロシです的な用法です近衛です
さてどこまでいけることやらどこにもいかないかもしれませんが頑張っていきたい所存でんなもん元からなんだよってな感じで
あとがきってこういうの書くところじゃないってまじですか?
あとがきは自由なんで個性なんで尊重されるべきなんで
あー
ちなみに今一番僕の中で来てる楽曲は『エージェント夜を往く』です
さようなら