第三話 美少女登場! ただし胸はない
貧乏な生活を送っていたジョニー。
彼には一人の可愛い妹がいた。
彼と彼の妹は毎日支え合って生きていた。
だがしかし、ある日妹が流行り病にかかってしまった……!
ジョニーは貧乏なので、妹を病院に連れていってやることが出来ない。
このままでは妹の命が危ない!!
どうするジョニー! がんばれジョニー!
続きは本編の後で。
「美少女キター!!」
おっと失礼、興奮のあまり声が出てしまった。でも仕方ないじゃん、だって美少女だよ? 男の子なら誰でも一度は憧れるじゃん?
と、嬉し過ぎてこの世界に来た時と全く同じ反応をしてしまう俺。隣ではカケルが「俺と会った時と反応違くない?」とか言っている。そりゃそうだろう、お前は男しかも俺よりイケメンときた、対してあの娘は女しかも美少女、どちらが会って嬉しいかなんて、一目瞭然だろう。
それにしても可愛い。なめらかな栗色の髪、ぱっちりとした茶色の瞳、その少女は美少女の条件を全てクリアしていた……ある一点を除けば。そう、胸がないのだ。絶望的なまでの壁、見た感じ俺と同い年くらいだから、もう成長は望めない……あと少し胸さえあれば100点だっただろうに。
「あのー? それで二人は何で、クレイジーシーブリームに胴上げされてるのかな?」
俺が胸の事を残念に思っていると、美少女がそう問いかけてくる。てかこの化け物そんな名前だったんだ、シーブリームって確か、鯛って意味だよなそのまんま過ぎんか?
「俺達たちここから抜け出せないんです。良ければ助けてくれませんか?」
ヤバい、カケルが凄い主人公感だして来ている?! まずい、このままだとカケルの方がカッコいいし、頭いいしで、せっかく現れた美少女がカケルルートに行ってしまう。なんとかして俺ルートに戻さないと……。
「そこのお嬢さん、こいつに騙せれたらいかんよ。こいつはクレイジーシーブリームの突然変異種でな、知性が普通のやつより高いんだよ。」
「ちょ、ケンヤ何言って……」
「うるせぇ! 気安く名前を呼ぶんじゃんねぇ! この鯛野郎が!!」
カケル、もといクレイジーシーブリームの突然変異種が、誤解を解こうとしていたので、何とか阻止した。ちょっと突然変異しただけで、ここまで頭が良くなるとは…クレイジーシーブリーム恐ろしい子!
「えっと……つまり銀髪のお兄さんが、クレイジーシーブリームの突然変異種だから、黒髪のお兄さんだけを助けるって事でいい?」
「はい」
「はい、じゃねぇよ! てかキミもこいつの事信用し過ぎ、あんまり人の話を鵜呑みにするのはよくないよ?!」
それを聞いた少女は、どちらを信用して良いのか分からずあたふたしている。ここはあの娘の未来の夫として、何がなんでもカケルの魔の手から守ってやらねば……。
どうすれば、カケルをあの化け物の突然変異種だと信じてもらえるか考えていると、カケルのポケットから一冊の本が飛び出した。その本は数学の参考書だった。がり勉なカケルらしく召喚直前まで、勉強をしていたらしい。そして少女はそれをキャッチすると、何かを考える様な動きをした後、凄く真面目な顔をしてこう言った。
「ようこそ、いらっしゃいました。六十四人目の勇者様」
前書きのあらすじ
最愛の妹が病気になったが、お金がないので病院へ連れていけない。
ジョニーは激怒した。
己が妹を侵している病原体に。
その現状を知りながら何も出来ない己に。
だからジョニーは考えた。
幾千、幾万もの策を講じた。
だがその全ては失敗に終わった。
そしてついに、ジョニーはがくりと膝を折った。
ああ、ジョニー諦めてしまうとは情けない。
愛する妹はおまえが貧乏なばかりに死ぬのだ。
ここでやらねば、いつやるのだ。今でしょ。
と自分を叱咤するが、もはや一寸たりとも身動きかなわぬ。
ジョニーはベッドに身を投げ出して、うとうと、とまどろんでしまった。
そして妹の命の灯火は、ゆっくりとその光を弱らしていくのだった。