これを恋というなら噛み砕きたい
フワッと風に染まる金木犀の香り
前の職場では人間関係が戦場すぎてやめた。
新しい会社も無事に決まり、人間関係も良好である。
基本的に恋をしてもいい事がないので、恋はしたくない、恋に落ちたくない。
でも、もっと側に近づきたくて、
笑顔が見たいと思ってしまう人ができてしまった。
不覚である。
席が近くの先輩。みんなから慕われている人気者。
当たり障りのない、みんなから嫌われないラインをよく弁えている人。
最初こそ、いけ好かないと思っていたのに
恋とは残酷である。
部屋が暑いと上着を脱ぐ姿とか色気ありすぎてやめてほしい。
そんなことを思いながら、職場で観察してしまう。
きっとこの恋は実らない。
私が幸せとほど遠いから。
彼が恋を必要としてないから。
彼が恋を必要としてないが、気になっているのであろう子がいるから。
彼女を香衣という。
その気になっている子も、先輩として彼を慕っているから。
そして、複雑なことに私と香衣は仲が良い。
2人の仲良しサークルの中に入っていく隙はない。
私が出る幕なんてないのだ。
独りには慣れてるはず。
恋の悲しい感情に振り回されるのはごめんだ。
こんな感情は、噛み砕いて飲み込んでしまいたい。
せめてもの我儘で、夢の中では好きな人と一緒に居る夢くらい見てもいいだろうか。
己が気持ち悪いと思いつつ、焦げてしまった心は救いを求める。
今日も香衣と彼は仕事終わりの一杯に、夜の街でまったりくつろぐ。
この2人がくっつくことはない。
香衣には恋人がいる。
彼も知ってる。
ただ、私にはそんな理由があろうと無かろうと
「ただの友情だけなのか。」と疑念を拭えない。
身体は触れずとも、心で浮気はできるのだ。
と汚い感情を持つ自分に嫌気がさす。
これを恋というならば、
こんな苦しくも哀しい感情は
噛み砕いてしまいたい。
そのまま飲み込んで 、消化したい。
そしてまた、何かを忘れたように月日に身を委ねて
流れたいのだ。