第3話ハイジャン
一人、睨みを効かせていたハイジャン。パーティの中で女性は一人になってしまった。だが、定位置に戻れた嬉しさでハイジャンは、パーティ内でも、頭角を表していった。
勇者であるアンソニーが惚れるぐらいのレベルアップだった。一人で強敵なゴーレムを自身のモンスタードラキュラッチを操り倒す。そんな強さから、勇者の次に強いのではと、パーティ内で権限を持つようになった。
「俺は、勇者だ」
「俺が、勇者だ」
「俺だから、勇者だ」
アンソニーは、またクララッカスが、いなくなった夜から、独り言を発するようになった。
「俺は、勇者だ」
「俺が、勇者だ」
「俺だから、勇者だ」
そんな宿に泊まっていたある夜・・・。ハイジャンがノックをして部屋に現れた。ベッド脇で夜空を見ているアンソニーの隣りに座り、口を開く。
「この旅は、いつ終りを告げる?」
「どうしたの?ハイジャン・・・」
「あなた、自分を追い込んでない?」
「なぜ?」
「自分が勇者だからって、余りにも頑張り過ぎないで・・・」
「ありがとう・・・」
「うううん?ねえ・・・。魔王を倒したら、どうしたい?」
「どうしたの?突然・・・」
「あなたの先の人生に興味があってね」
「そうだな、世の中をもう一度再生したいな」
「あなた自身が?」
「ああ、世界を正したい」
「それが、あなたの野望ね?」
「野望という程、たいしたものでない。ただ、今、世の中は支配されている」
「それをあなたが、解放したいと・・・」
「そうだな!」
「ねえ?魔王を倒したらさ?私たち結婚しない?」
「えっ?普通逆だろう?プロポーズは、男からするもんじゃ・・・」
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど・・・」
「だったら、いいじゃない?私、あなたの子供が欲しいの!」
「おっおい!急に・・・・」
「いいじゃない・・・今は二人きり・・・」
ハイジャンは、以前のクララッカスより強引に勇者とのそれを求めた。それに対して、断れない意志の弱い勇者アンソニー。否、ただ欲求不満解消のためなのか、アンソニーもそれに応えた。
戦いに出る。
生き残る。
宿に泊まる。
そして、夜になると、ハイジャンとの行為。
それは、もう日常化していった。それが3ヶ月も経とうという頃・・・。
ハイジャンからの突然のプロポーズ。アンソニーは、それに応えた。ある街で、勇者御一行の盛大な結婚パーティが開かれた。
街中祝福ムード。
ハイジャンのお腹の中には、アンソニーの子の命がやどっていた。
ハイジャンは、戦闘に出ることより、街の病院に入院。パーティは、一人減って3名になった。だが、アンソニーは打倒魔王を目指し、戦地に赴く。新たな戦地で、新しいパーティ仲間を探すことにした。