表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/218

夏 - 19

「ふぅ……さすがだな」

 前のバッター乃村の勝ち越しタイムリーに感心しながら、雄一は続投する事になった相手ピッチャーの矢花を見据える。

(志願したなら、強気に攻めてくる。ストライクを取りにくるなら……)

 打てない相手ではない、故に凡退は許されない。

 何より、先輩麦根に代わって送り出された自分が、稲田に匹敵する活躍をしない訳にはいかないのだ。(……落ち着け。シングルヒットで良いんだ)

 追加点を上げなければ、まだまだこの試合はシーソーゲームから抜け出せない気がする。

 なら、自分が打たなくては。

(真っ直ぐ、真っ直ぐ……!)

 わざわざ打ちにくいカーブを狙う必要はない、真っ直ぐが甘くきたら打つ、それだけを頭に浮かべ、余計な事は考えない。

 矢花が投球モーションに入るまで、ひたすら一つの目的だけを頭に浮かべ、バットを握る力を強めたところで、雄一は気づく。

 自分はやはり、打ちたいのだと。そして打つために自分は必死になっているのだと。

(真っ直ぐ来い、真っ直ぐ来い……!)

 今の必死な姿なら、あいつに見られても胸を張れる。

 そう思えば思うほど、打てなかったらどうしようという不安より、打ってやりたいという欲求の方が強く強く湧き上がってきて、緊張を感じなくなっていた。

 そして初球、ストライクを取るためにインコースへ投げ込まれてきたストレートを雄一は迷わずバットで捉えた。

 わざわざ続投を志願したピッチャーが、逃げのピッチングをする筈がない。

 そんな読みが見事に当たり、打球はまたも左中間へと抜け、貴重な二点タイムリーとなった。

「っしゃああ!」

 思わず飛び出す雄叫びと、それを掻き消すくらいの仲間の歓声が、試合の流れが完全に水美野球日に傾いた事を現していた。

 結局この回が試合の分岐点、試合の流れを握ったのがどちらのチームなのか、言うまでもなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ