表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/216

春 - 8

「なんだよ、突っかかってきやがって」

 名も知らぬ後輩に練習態度について軽く非難された雄一が、モヤモヤとした気分を胸に渦巻いていると、

「お、珍しいな。女子口説いてやがるとは」

 横合いから聞こえた声に不機嫌だった顔を今度は鬱陶しそうなものに変化する。

「からかわないでくださいよ、麦根先輩」

 声の主は一学年上の麦根。言わずとしれたスタメンの常連で、一年秋からチームの主力選手である。

「練習漬けの寮生と違ってお前は好き勝手に出来る時間が多いんやから、今の内に遊んどけよ。大会始まったら試合の事しか考えられないんやぞ」

「いえ、俺はベンチに入れるか微妙なんで……」

「どの口が言ってるんや、前の試合打点上げとったやろお前」

 遠慮がちながら本音を告げる雄一だったが、引き下がらずにすぐに反論してくる。

「一打点、しかも4打席でヒット一本ですよ? それくらいで…」

「けどランナー背負っての打席は最後だけだったんだろ? お前、分かりやすいくらいチャンスでは強いよな」

 ストレートに自分の選手としての特徴を言われ、なんだかむず痒くなる雄一。

「たまたまですよ。たまたま打てた時がチャンスだったんですよ」

「またそれか、いい加減自分の実力を見極めろっての。自惚れよりはマシだが、ネガティブ過ぎても得はないぞ」

 評価してくれるのはありがたいが、やはり買いかぶりだと思った。結局適当な相槌を繰り返してその場から離れ、部活を終えた。

(くそ、なんかムカつく)

 頭の片隅に、名も知らぬ陸上部の女子との口論を気にかけモヤモヤとしながら。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ