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夏 - 17

 試合はあっという間に振り出しへと戻った。

 四番沼山がライトへの犠牲フライを放ち一点差とすると、続く五番稲田は矢花の初球の真っ直ぐを捕らえてセンター前へ。タイムリーとなってさらに一点を追加し八対八とスコアが変わる。

 なおもワンナウト一塁二塁の状況で、バッターボックスに入ったのは六番の広岡。

 彼は比較的落ち着いた、というよりは冷めた表情のまま、一打勝ち越しの場面を迎える。

(はぁーあ、大事なところで回ってきちゃったなぁ)

 水美不動のレギュラー勢において、広岡は沼山や青山に比べれば少しインパクトの薄い選手と捉えられているだろう。

 一年の頃から公式戦に出ていた彼等と違い、広岡は昨年の夏まで殆ど大会に先発として出場した事はなかった。守備は良かったものの打力はなく、あまり突出した才が見られなかったからだ。

 だが彼はとにかく無骨なまでに練習に励み続けてきた。レギュラー勢に嫉妬する事もなく、焦る事もなく、自分の持ち味である守備をとにかく磨き続けた。打てないながらに打撃では繋ぐ意識を高め、球を見極め出塁する事に重点を置いて練習を続けた。

 そして去年の秋、公式戦で多くの四球を選んだりバントといった小技を何度も成功させ、守備ではセカンドを守り続けエラーを出場全試合で一度しかしない安定感を見せ、監督と選手からプレーで信頼を勝ち取った。

(ゲッツーだけはしちゃダメだよなぁ)

 マイナス志向な考えを抱く広岡だが、それは現実的に物事を見られるという意味の裏返しだ。

 だからこそ、立候補していないにも関わらず部内の満場一致でキャプテンを任せられ、一年間活動してきたのだから。

 そんな地味ながらも堅実にチームに貢献する事が出来る広岡だからこそ、この場面で気持ちを逸らせる事なく、矢花の投球に対応する事が出来る。

 際どいコースのボール球を見極め、フォアボールを選び、広岡は涼しげな顔のまま一塁へと向かう。

 しかし対照的に、期待通りの結果を手にした彼の活躍に水美ベンチは大いに盛り上がり、瞬く間に押せ押せムードが強まっていくのであった。

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