表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/218

夏 - 6

「あ~……萎える」

 夏休み前には当然期末試験がある。

 水美は基本的に直前の休日は部活動は停止になり、陸上部もその日は休みだったため、早希は朝から自室で試験勉強に励んでいた。

 父は仕事、母は買い物に出ているため家には誰もおらず勉強しやすい静けさに包まれていたが、二時間が過ぎたところで早希は急にやる気をうしない、だらりと椅子にもたれかかった。

 今勉強しても頭には入らないだろう、少し休憩しようと早希は立ち上がり、一階で麦茶をコップ一杯飲み干してから、ベッドの上に仰向けに寝そべる。

「暗記ってやってもやっても、次の日覚れてるか心配なのよねー……」

 個人的に好きではないからと避けていたが、やはり回数を重ねなければ身につかない数学に切り替えようかと思ったところで、早希は何気なくスマートフォンを手に取り画面をいじる。

(そういや今日って、うちの野球部試合だったっけ)

 試験前でも部活動のあるところはある。野球部は毎年期末の前くらいから夏の大会が始まるらしく、それに付き合う応援団も勉強に使える時間を割いてまで遠出するのだから、大変だなと早希は思っていた。

「……先輩は、勉強出来てるのかな?」

 最初は野球にあまりやる気がなさそうな人だったが、勉強熱心というタイプにも見えなかった。期末前の大事な時に、負ければ終わりの大会に臨まなければならないというのは気の毒だ。

「どうでもいいけど……ん」

 どうでもいいが、意味もなくネットで高校野球の速報を検索する。

「もし負けたら、先輩達の今年の夏は終わり、か」

 大袈裟な表現だと最初は思ったが、大会で敗退すれば三年は引退、一二年は秋以降の大会に気持ちを切り替えなければならない。勝つために練習してきた彼等にとってみれば、決して言い過ぎでないのかもしれない。

 もし今日の試合負ければ、野球部は夏休みを前にして『夏』を終える。

 それはなんというか、無念でしかないだろう。

 そんな事を思いながら、早希は画面に映し出されたスコアボードを見て、一瞬言葉を失う。

「え、」

 野球に詳しくなくても、合計点が多い方が勝ちな事ぐらい分かる。

 だから見た瞬間に、早希はどっちが勝っていて、どっちが負けているのかすぐに理解出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ