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春 - 68

 紅白戦の後、互いのチームで反省会をした後、しばらく練習をしてから今日の部活は終了した。

 紅白戦をしたからといって、すぐに何かが変わる訳でもない。

 夏の大会のベンチ入りメンバーは今後の練習試合での活躍や練習態度など様々な要因で変わってくる。

 なので表向きは誰もがいつも通りに練習を終え、いつも通り寮へ戻ったり帰路についたり、自主練に励む者に分かれた。

 雄一は当然、さっさと帰路につく事を選んだ。

(いやぁ……疲れた)

 紅白戦は最終的に七対六で紅組が勝利した。

 六回以降は両チームとも控え選手をつぎ込み、バタバタとした試合展開になって、開始時とは全く別のチームになっていたが。

 雄一は二打数一安打、レギュラー組ほどではないが、一応の結果は出せたつもりだ。

(後はサボらないようにするだけだな)

 去年は試合に出るのは当然だと考えていた。

 結果がついてきていたからだろうが、結果を出そうとして結果が出るのは嬉しいものだと実感する雄一。

「……」

「ん?」

 ふと、何か気配を感じて足を止める。

 するとザッという、中が詰まった鞄が揺れる音がして、雄一は振り返った。「あ、れ」

 少し距離を離した後方に、見覚えのある女子生徒の姿。

 先日バッセンでも遭遇した、陸上部の一年生鈴浪だ。

「……お疲れみたいだな」

 彼女は相当汗をかいたのが一目で分かるくらいにくたびれた様子で、体が湯気が出そうなくらいにあったまっているのが一目で分かる。

「……先輩も、頑張ってたみたいですね」

「何でそう思うんだ?」

「だるそうに歩いてたんでいたんで」

 相変わらず涼しげな態度だと彼女を見て思う雄一。

 そんな彼女が大会で結果が出ずバッセンで憂さ晴らしをしていたとは、今でも少し信じがたい話だった。

「試合してたんですか?」

「なんで分かるんだ?」

「遠くからなんとなく見えましたから。打てました?」

「……一本な」

 一応打点は上げた、結果は出せたと言っても良いだろうが、自分で、しかも後輩の女子に自慢するのはなんだか恥ずかしかった。

 立ち話もなんなので、二人共ゆっくり歩き出す。

「そっちは走り込んでたのか?」

「はい。この前先輩に叱咤されてから、練習も今まで以上に頑張ってるんですよ」

「そこまで強く言ったか?」

 叱咤というより、単に軽く励ましただけだと思うが。

「けど、偉そうな事言ったが、お前が走ってるとこは見たことないんだよな」「そうですっけ? 私は先輩の試合してるとこ、見たことありますよ」

「そうだっけか?」

「はい。ヒット打って、相手の選手に走ってるのを止められてましたよ」

「ぶっ……」

 安喜第一との試合でタイムリーを打った際に一二塁間でタッチアウトされた時の事を言っているのだろう。

「そんな事もあったかもな」

 恥ずかしいので言葉を濁してごまかして、雄一は話を元に戻す。

「お前の走りを見てもないのに、偉そうに励ましてたんだと思うと、なんかな「……具体的な指導でもないんですから、別にいいじゃないですか」

「ん、まあな」

 こだわる事でもなかったなと、雄一は頭を掻いて嘆息する。

「……じゃあ、見てみます?」

「は、え?」

 すると横から早希に思いもよらない提案が投げかけられ、雄一は面を食らって彼女の方を見た。


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