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春 - 58

「らぁ!」

 麦根は二球目の内角のストレートを打つも、詰まってボテボテの当たりになった。

 それでも飛んだ方向が良く一二塁間を抜け、ツーアウト一三塁と白組のチャンスが広がる。

「おっしゃー稲田頼むぞー!」

 白組ベンチの声が大きくなり、打席には4番の稲田が近づいてくる。

「おいおい、俺にそんなにアピールさせたいのかよ、乃村ちゃん~」

「まさか、4番を抑えた方がイメージ良いじゃないですか」

「ランナー出さない方が良いと思うけどな~」

 そりゃそうですね、とマスクを被り直す乃村。

 どうにも制球がよろしくない臣川、ボール先行でも構わないと乃村はまず外へ真っ直ぐを要求する。

 今度はちゃんと外れ、次は稲田の足元にミットを構えた。

「ぉらっ!」

 臣川の気合の声に押されるようにストレートは綺麗にインローへ決まった。

 ワンボールワンストライクになって三球目、単調なストレート攻めに変化を与えるため、外へのカーブを要求する。

 引っ掛けてくれれば良いし、見逃されてもストレートとの緩急を作れると乃村は読んでいたのだが、

「うっし!」

 稲田の鋭いスイングは彼の体から離れるボールを見事に引っ張って、右中間へ打球を持っていった。

「まずっ!」

 マスクを外しながら長打になるのを恐れる乃村、センター青山が素早く打球に追いついて後ろに破れらる事はなかったが、三塁ランナー石中は悠々ホームインし、勝ち越しを許し尚且つツーアウト一塁三塁のピンチを再び招いてしまった。「おっしゃー! いいぞ稲田さん!」

「二打席連続タイムリー!」

「さすが4番!」

 普段下位打線とはいえさすがはレギュラー組という事か、打った稲田は余裕ある笑顔で白組ベンチに手を掲げている。

(変化球狙い、かな)

 乃村は浮かない顔をしながら分析する、稲田だけでなく白組の打者は全体的に臣川の変化球に手を出してきているように思えた。

 元々真っ直ぐ主体のピッチャーな上に今日の臣川は調子が良くない、甘く入れば力負けしないと読んでのバッティングだろうか。

 次のバッター南田は初球の釣り球を打ち上げスリーアウト、追加点を許さず紅組ナインがベンチへ引き上げていく。

「南田さんがせっかちで助かったよ」

「あんま大きな声で言うな」

 臣川はずっとイライラしているようだが、追加点は許さなかった事で少しは自制出来ているらしい。

(こういうピッチャーを勝たせてこそだよ、良いキャッチャーって)

 自分に言い聞かせるようにして、乃村は一つ深呼吸しながら、打席に備えて防具を外す準備に入った。


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