212/218
二年目 春 ー43
和中、背番号十八。
筑紫学院野球部の新二年生、サウスポーのピッチャー。
地元で野球が出来ればと思っていた最中、隣の県から来ていたスカウトに目が留まり、特待生制度に釣られて入学した。
しかし一年目の秋までは、ろくにベンチ入りも出来ず、補欠チームとして登板するに留まっていた。
秋、やっと迎えた公式戦、一イニングだけ登板した和中は、打者三人をいずれも内野ゴロに打ち取ってみせた。
(あんなのまぐれだったのに、評価してもらえるなんて)
選抜のメンバーに選ばれたのも、何かの間違いだと思った。
あれよあれよと辿り着いた甲子園の舞台、正直緊張よりも戸惑いの方が強かった。
だから、別に打たれたって仕方がない。
でも、打たれるつもりで投げるのは、ピッチャーではない。
「開き直って投げろや、和中ちゃん」
キャッチャーの木田が、リラックスさせようと軽く背中を叩いて声をかけてくれる。
「僕はずっと、そのつもりですよ」
それに笑顔で返し、和中は内野陣が散っていく中、ロジンに手をかけた。




