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二年目 春 ー24

「落ちてっ!」


 早希が叫んだ直後、雄一が打ち返したボールは相手チームの野手三人の間で高く跳ね、前のめりに突っ込んできていた外野手の頭を超えていく。


「やっ……ヒット……?」


 凡退したと眉をしかめていた早希、反射的に立ち上がってグラウンドを見つめたが、果たして今のがヒットなのかどうか、ルールに詳しくない彼女は一瞬リアクションに迷ってしまった。


 だがすぐに周りから巻き起こった大歓声で、彼がヒットを放ったのだという事実に気が付く。


「まわ、走れ、走ってよ!」


「ちょっ……早希~!?」


 横で驚くエリナを気にせず、早希は喉の奥から湧き上がる言葉をとにかく吐き出す。


 水美野球部のランナーが一人、二人、とホームに帰り、さらに一塁ランナーも三塁を回って走っていく。


 ボールはというと、お見合いをしてボールを取り損ねた三人の後方を転がっていき、慌てて彼等のうちの一人が追いかけていく姿が見えた。


(これなら……同点……!?)


 早希の思う通り、三人目のランナーが帰って三点目が入り、スコアは同点となって球場が沸き立つ。


「せっ……先輩は!?」


 目まぐるしく動くグラウンドでの出来事に動転しながら視線を動かす早希。


 打った本人の雄一は二塁から三塁めがけて、必死になって走っている。


「よーし! スリーベースだろこれ!」


「すごいよ、あの子!」


 スタンドの誰かが叫んだ言葉に、早希は頬が綻ぶ感覚を覚えて、思わず手で口元を覆った。


「……っ、え」


 だが次の瞬間、スタンドは再びざわめき立つ。


 バッターランナーの雄一は、僅かに三塁を過ぎたところでよろめきながらも、次の瞬間にはホームに向けて走り出したのだ。


「早希~? 早希~? 何がどうなってんの~?」


「ボールは、ボールは?」


 慌てて外野に視線を戻す早希は、センターの選手がようやく転がっていたボールを拾い上げるのを見て、若干安堵する。


 あそこからなら間に合わない、そう思った矢先だった。


 レフトにいたセンターの選手がホームめがけて投げた送球は、まるで槍のように鋭いものであった。


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