二年目 春 ー10
「どんな腕ついてんだ、あいつ」
ベンチから羽場の投球を眺めていた雄一は、嘆くように呟く。
「あれでも一年の時はベンチだったらしいぞ」
横からそう声をかけてきたのは上和。
「塁出ろよ、お前」
「うるせえわ、そっちこそ早く出ろや。見てたんだろ?」
「打席に立ったんなら上和の方が分かってるんだろ? 狙って打つ球じゃねえよあれは」
羽場の投げるフォークは、打ちにいく球ではない。
あくまで雄一の主観だが、プロのレベルに届くほどだ。
一発勝負の試合において、数打席で攻略するのはあまりに効率が悪いだろう。
「じゃあどうするってんだ?」
「真っ直ぐ、だろ?」
「そりゃそうだろうけどさぁ、めっちゃはえぇぞ?」
「当てて、運良くフェアゾーンに飛べば、こっちの勝ちだ」
とにかく塁に出なければ点は獲れない、逆をいえばヒットでもエラーでも塁に出ればチャンスはある。
「それで良いのか?、代打の切り札さんよ」
「そんなもんだろ、バッティングなんて。絶対はねぇよ」
確実でないプレーを、一打席目で決める事で期待されるのが代打だ。
そんなギャンブルを、超高校級のピッチャー相手にやれというのだから、無茶な話だ。
「……懸けるしかない」




