表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/218

二年目 春 -4

「ええかお前ら」

 試合開始直前、監督の野間笠はベンチ内で部員達に向かい合って、濁った声を放つ。

「別に野球はどこでやろうと、ルールは変わらん。見る人間が勝手に特別扱いしとるだけやけん、お前らは気負う必要なんかないんじゃ」

 監督の言葉に息を呑む、水美野球部一同。

 その表情を見渡した後、野間笠は咳払いをして、

「けんどみっともない試合をしてきたチームとも思っとらん、全員、頭も体も使って、勝ちに行ってこい。ええな?」

「おぉっす!!!」

 気合いの込められた返事を合図に、選手達はグラウンドへ飛び出す。

「頭ね……」

 雄一は小さく呟きながら、小走りで整列に向かう。その背中の背番号は、十七。

「落ち込むなよ、雄一」

 すぐ横を通り過ぎる上和が、ニヤニヤしながら背中を叩く。

「スタメンだからって偉そうにすんな」

「まあ落ち着けって、一打席でも四打席でもやる事は変わらねぇって、それにお前一試合出まくるスタミナ無いだろ?」

「……どっちでも良いよ、打っても打てなくても」

 誰が打とうが打てまいが、目指すべきはそこではない。

(勝てば個人の成績なんて、誰も覚えてないだろ……)

 聖地と呼ばれる甲子園のグラウンドに来て、チームが勝つ以外に目的を持つ球児など、どれだけいるだろうか。

「俺も勝ちたいさ」

 そして雄一もまた、端から見れば大多数の一人。

 とにかく甲子園で勝ちたいと思う、普通で必死な高校球児であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ