二年目 春 -2
水美野球部の試合は第二試合、開始時刻は十一時半と通告があった。
「そらライト行くぞー!」
与えられたグラウンドでの練習時間、やる内容はいつも通り、しかし全員がいつも以上に気合いが入っていた。
「おっ……うがっ!?」
雄一は高く打ち上げられた球を危うく見失いかけ、なんとか追い付いて捕球する。
「中光! 風吹いてんの考えて動け!」
「うぉっす!」
甲子園球場はライトからレフトへ浜風と呼ばれる特殊な風が吹き、試合のプレーにも影響を及ぼす。
この練習時間は初めて使用するグラウンドに慣れるための貴重な時間であり、時間はあっという間に過ぎ去っていった。
「あ~でかすぎてやりにくいだろ、ここ」
「プロも使ってるのにそれはないでしょ、雄一が下手なだけだよ」
「うるせえよ、アマチュアの高校生にプレッシャーかかりまくりだろうに」
雄一は高校野球に対するメディアの取り上げ方を快く思っていない。
一スポーツの学生の試合に必要以上の期待をされている気がするからだ。
「日本で人気なのが野球なだけで、どこの国もそういうスポーツあるでしょ?」
「そうかぁ?」
「まあ雄一は基本ベンチだし良いじゃん」
「うるせえって」
他愛ない話をしているうちは良いが、ただでさえ休みはインドアな雄一からすれば慣れない土地は居心地が悪い。
ユニフォームを着ているだけで周りから注目され、記者には無断で写真を撮られる。
一流でない雄一には、目立つ事は負担でしかない。
「……出たくない訳じゃないんでしょ?」
「そりゃまあ……な」
それでも立てる事に高揚している自分がいた。
甲子園という、夢の舞台に。




