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春 - 16

「うーっす」

 住宅街からやや離れた立地の団地の5階にある我が家に戻ってきた雄一は、夕食を終えたところで聞き取りにくい適当なカツゼツで食べ終えた事をまだ食事中の両親に示しながら、食器を流し台へと持っていく。

「雄一、ちゃんと大きい皿から置きなさいよ? バランス良くね」

「うーっす」

「そういやあんたの部屋掃除したんだけど、鞄投げっぱなしにして教科書床に散らばってたわよ? 今度からちゃんと整理しておきなさい。今回は母さんが片付けといたんだから」

「うーっす」

 母の言葉に肯定とも聞き流しともとれる返事をする雄一。

「ところで、もうそろそろゴールデンウイークだけど、今年も毎日野球部の練習あるの?」

「うーっす……多分」

「たまの連休ぐらい家でじっとさせてもらえないのかしらねぇ、あんたの汚い日ユニフォームを毎日洗ってたら、他の洗濯物まで汚れちゃいそうだから母さん結構不安なのよ?」

「うーっす分かったっての」

 なら休めとでめ言いたいのかと心の中で呟きながら、食卓のある部屋から出ようとする雄一。

「帰ったー」

 と、玄関の方から語尾を伸ばした気の抜ける少女の声が聞こえてくる。雄一の妹の中学三年生、優奈ゆうなである。

「優奈、帰り遅くなるなら連絡しなさいって言ったでしょ」

「間に合うと思ったんだから仕方ないじゃんーちょっと友達とだべってただけって……ちょっと兄さん-!? 肌がツヤツヤしてるって事はもう風呂入ったのー!?」

 自らのボリュームのある髪を留めるカチューシャを外し、靴を脱ぐまではボーっとしていた優奈だったが、雄一を見て瞬時にパッと目を見開く。

「だから何だよ」

「なんで先に入っちゃうのよー!」

 潔癖症(本人は認めていない)の優奈は普段、汗臭さが移るからと雄一よりも後に風呂に入る事を嫌っている。

「じゃあ早く帰って来い」「待っててくればいいじゃんー!」

「勝手な事言ってんじゃねえぞ」

 プンプン怒る優奈が鬱陶しかったので、額を指で結構な強さで小突いてから、雄一は自分の部屋へ向かう。

「いったぁ-!? 母さん、兄さんが叩いた-!」

「いいから早くお風呂入っちゃいなさい、 母さん達食べ終わっちゃうわよ。父さん食べ終わったらすぐ風呂に入りたがってるの、知ってるでしょ?」

「えー! それもやだー!」

 騒がしい妹の喚きを聞き流しながら、雄一は逃げるように自分の部屋へ早足で駆け込んだ。

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