表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/218

秋 - 52

 暮れの季節、既に薄暗くなりだした夕焼けを背に、生徒達が帰路につく。

 談話する者、寄り道する者、真っ直ぐ帰る者、急ぐ者、多様な顔や行動を見せる生徒達の騒々しさに混じるようにして、鈴浪もまた友人のエリナと加奈と共に下校中であった。

「もっと練習したいんだけどなー」

「なに言ってんの~こんな寒い日に」

「五時までじゃ全然足りないよ、本当なら自主練したいんだけど」

「……暗くなるから、危ない」

「分かってるって」

 冬は日が暮れるのが早いため、下校時間も17時に繰り上げられている。

 当然部活動の時間も短くなり、やる気のある生徒にとっては物足りなさを感じている時期だろう。「冬休みも部活ばっかか~嫌だな~寒いと肌が乾いちゃうし」

「乾燥したら動きにくいものね」

「そうじゃなくて~」

 寒さを紛らわすように会話を続ける早希達は、やがてとある十字路に差し掛かり、早希は二人と別れて自宅を目指す。

「あ、れは……?」

 しばらくして彼女は視界に小さく映る何かを発見して、静かに立ち止まった。

「何やってんの、あの人」

 呆れるような言葉が向けられた人物は、坂の途中の自販機の前に突っ立っており、キョロキョロ視線を動かしては落ち着かない様子だった。


「先輩、早く帰ったらどうですか」

 気が付けば真横に鈴浪早希がいて、片眉を下げてこちらを見つめていた。

「いやその……喉が渇いてな」

「買えば良いじゃないですか、寒いのに」

「まあ、そうなんだが……」

「……奢ってくれるんでしょう?」

「ん……まあな」

 本当はこちらから話しかける予定だったのに、逆に話しかけられて言われるがままになってしまう雄一。

「えっと、スポーツドリンクで良かったか?」

「はい、先輩はエナジードリンクですよね?」

「ん」

 生返事しながら小銭を自販機に入れ、それぞれの飲料のボタンを押す。

「はいっ」

「うお!? 何してんだよ」

 そして二本目にエナジードリンクが出てきたところで、早希は雄一よりも先に手を伸ばしてそれを掴み、横取りしてきた。

「そっちじゃないだろぉ、っと」

 言うよりも早く、早希が投げてきたのは、彼女が飲む筈のスポーツドリンクだった。

「たまには違うの飲んだ方が良いですよ」

「部活中に散々飲んでるっての」

 それでも聞かずに歩き出す早希、雄一は仕方なく後をついていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ