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秋 - 47

(あのライト、代わったばかりやけんど、あんま守備上手くなさそうっちゃね)

 バットを構える前に外野を一瞥した後、新田は思案する。

 初球から振りにいくが真後ろへのファールとなり、首を捻る。

(右打ちは難しかたいのう~)

 バットコントロールが巧みな訳ではない新田にとって、考えて打つのは逆効果だった。

 なので来た球を狙って打つ事に意識を集中させる。

(甘くこい、甘く……!)

 二球待って迎えた四球目、真ん中に来たとフルスイングする新田だったが、

(あ! フォークかい!)

 落ちる球にバットが僅かに掠り、正面に向かって高くバウンドさせてしまった。

「まずったーい!」

「西沢、ファースト投げて!」

「チッ! このぉ!」

 ボテボテの打球のせいで捕球が遅れ、西沢は乃村の指示を聞いてすぐさま一塁へと送球するが、

「セーフセーフ!」

 間一髪、新田の足の方が早くベースを駆け抜けて、内野安打となって一点を奪われてしまう。

「おっしゃー! ラッキーたい!」

「新田ー! いいぞ!」

「野手の方が良いんじゃねえのかー!」

 ジョーク混じりな声援で沸き立つベンチ。

「おーい! やったたい!」

 試合が再び動き出す中、新田はキャッチボールを続ける野賀へ声をかけるが、こちらを見ようとはしない。

「ん~? 聞こえないっちゃかのう」

「集中してるんでしょう」

 コーチャーの言葉に首を傾げながら、特に気にする事もなく新田はヘルメットをかぶり直すのだった。


 その後、追加点は許さずイニングが終わり、ベンチへ戻る雄一。

「一点ならすぐ取れるって! 気合い入れろよ皆!」

 旗川の激に部員の士気が高まる中、雄一は口元を真一文字に結んでいた。

「別にミスじゃないっての」

 そこへ背後から上和が肩を叩いてフォローしながら横を駆け抜けていく。

「分かってるって……」

 小さく言葉を返す雄一だったが、どうしても自身の守備のシーンが脳裏に甦り、顎を手に乗せ肩肘をつく。

「あのなあ、雄一」

 そこへ上和がタオルで顔を拭きながら、

「あんなん捕れる奴の方がいねぇっての。大体お前守備上手くないだろうに」

「まあ、そうだな……」

「お前はいちいち気にしすぎなんだっての、俺なんて後逸しても次の打球捕れば良いぐらいの気持ちでやってんだからな?」

「お前は守りだけがウリなんだからちゃんと捕れよ!」

 ベンチのどこかからツッコミが飛び、笑いに包まれるベンチ。

「真面目な話してんだから水差すなって! ……たく、それにな雄一、エラーを試合中に振り返っても別にすぐ上手くなる訳じゃねえ、割り切れよ」

 上和の言う通り、犯したエラーは試合中にチャラにはならないし、守備力が向上する訳でもない。

(この後のプレーで、やりきるだけだ……!)

 まだ代打でも守備でも結果は出せていない、だが試合は終わっていない。

 ならばやる事に迷う必要はなかった。

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