秋 - 6
打球は力なく頭上へと舞い上がり、相手キャッチャーのミットに難なく収まった。
「アウトッ! ゲームセット!」
アンパイアの声に続いて、両チームの選手が整列のためにホームベース付近へ駆け寄っていく。
「中光、ほら急げって!」
キャプテン旗川に尻を叩かれ、雄一は重い足取りで打席から列の中に混じり、力なく頭を下げた。
秋の県大会準決勝、水美野球部は新鋭と呼び声高い市立蒲田と対戦したが、両者とも中々決定機をものに出来ず試合は進んだ。
そして七回表、蒲田は四球とエラーで出たランナーを犠打で三塁へ送り、一番庄司がライト線へのタイムリーを放ち先制、その後臣川は制球乱れ、二番手播磨も打たれこの回三失点、結局そのまま試合は終了した。
今日の試合、雄一は八番ライトで出場したが、四打数で無安打、そのうち二回がチャンスでの凡退と精彩を欠き、足を引っ張る形となってしまった。
「負けたんは残念やが、まだ三位決定戦が残っとる。地区大会出たいんなら気持ち切り替えんといかんど」
監督の言葉に選手達は「おぉっす!」 と返事をし、帰りのバスへ向かっていく。
「っ~」
そんな中、雄一は視線を落としたまま、おぼつかない足取りで球場の外を歩いていた。
「雄一」
呼び止めてきたのは乃村、明らかに普通ではない様子の雄一を見かねたのだろう。
「うちのバスはあっちだよ」
「ん、あぁ」
言われるがままバスがある方を向こうとするが、すぐに足を止めて、雄一は乃村にこう尋ねる。
「なぁ、乃村」
「うん?」
「俺、ショボくなってるか?」




