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秋 - 4

「うん、ぬるいな」

 一口たこ焼きを頬張って、雄一は率直な意見を述べた。

「このフランクフルトもそんな感じですね。作りおきだから、仕方ないですよ」

「まあ期待はしてなかったけどよ」

 雄一と早希は賑やかなエリアから離れ、人気の少ないグラウンド隅にあるベンチに腰かける。

 早希も友人の分を含めて食べ物を買いに来ていたようだが、一人分がやや量が多いという訳で自分の分をそれぞれ半分交換しようとなったのだ。

「……、最後のバッターだったんですね」

 フランクフルトをかじってから、早希が尋ねてくる。

「あぁ、なるつもりはなかったけどな」

 夏休みが明けてからこうして早希とまともに話したのは今が初めてだった、試合観戦に誘ってからそのままだったため、会ってどうもで済ますのも気が進まず、ここで少し会話をしようと思って出てきたのだが、夏の大会での試合についてであった。

「中途半端に振ったせいで犠牲フライにもならなくて、先輩達の夏を終わらせちまった。正直、忘れられないぜ」

「それは、悪い意味でですか?」

 早希の鋭い指摘に、雄一は口ごもる。

「っ……三年が引退してから、結果が出てないんだ。気のせいかもしれないけど、打てなくなってん

だ」

「……スランプ、ですか」

 あえて口に出してこなかった言葉、しかし彼女に言われた事でようやく自覚出来た。

 雄一は夏の大会後の練習試合でレギュラーを任せられてきたが、自分でも驚く程に打てなかった。

 ヒットが欲しくて必死になるのと反比例するように、成績は降下していった。

 理由は分からない、だがきっかけなら分かる、夏の大会だ。

 自分の打席で終わったあの試合から、何か変わってしまったのだ。

「……もしかして落ち込んでます?」

 長い間の沈黙を破って、早希は小さい声で尋ねてきた。

「まあ、かもしれないな」

「……、」

 何を思ったのか、早希はフランクフルトを食べ終えると立ち上がり、くるりと体をこちらへ向けて、見下ろすような体勢を取る。

「じゃあ先輩、私は自慢をしていいですか?」

 そして僅かに口元を綻ばせて、唐突にそんな言葉を話してきた。


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