プロローグ
どうも、初執筆の白珀千黒です。友人に書いてと言われて、一カ月。
とある小説と雰囲気がかぶってたり、なかったりして下手くそですがどうぞ見てやってください。
桜が咲く季節。頭の上には満開の桜が咲き誇っている。辺り一面桃色に包まれている。
「いや、ほんとに桜の木しかないんだが」
辺りをもう一度見渡してみる。右に桜、左に桜、後ろに桜、前にも桜。ちなみに上は先に言ったように桜が咲いている。
「全くどうしてこんな事に」
俺は肩を落とした。ここは私立草紙学園高校、の通学路。町から外れたところに位置している。更には高校には珍しく文系しかないという高校だ。数学や理科などといった理系科目が苦手な人間には持ってこいの学校ともいえる。しかも、服装は草紙学園の紋章をつける代わりに完全に自由。ただし難点が幾らかある。
「おーい。三鷹同輩。どうしたの?そんなところで項垂れちゃって」
後ろからの声の主を振り返ると少し小走りで走ってくる少女がいた。矢原楓。この学校に入ってから何かと仲良くさせてもらっているクラスメイトで、生徒会に在籍している真面目なタイプの子だ。俺のところまで一気に駆け上がってきたのか、額には小さいながら汗が浮かんでいる。
「もう通い始めて一年以上経っているというのに。そろそろ区切ったら?」
「ああ。いや、割り切ってはいるんだが、こうも見晴らしが良いと少しな」
桜の切れ目から覗く町々。朝日に照らされてきれいではあるだが。
「それにしても今日は早いね。部活?だったら急がないとね。まだ五合目だよ。私はちょっと生徒会があるから先に行くね」
そういって、矢原は駆け上っていく。そう、まだ五合目なのだ。まさしく五合目。おそらくは誰もが連想するそれであっている。
草紙学園の難点。それは立地条件だ。我らが草紙学園は山奥に立地していた。ただ、これだけではない。その立地条件のせいで普通の受験者は他の高校を受験する。だが何の資料も見ずに、町に受験会場がある事に何の疑問も抱かずに、噂で結構な進学校なことに浮かれ、文系だけなんてラッキーとか思って受験した俺みたいなやつもいる。それ以外の生徒はまあ、なんだ。普通じゃなかっただけ。
――つまり、私立草紙学園高校は変人集団の巣窟だった。
「でも、今じゃそれにも慣れ始めているわけなんだがなあ」
そう無意識に呟くと、慣れというものの怖さに寒気を感じたので俺は走って、一気に学校まで駆け上った。
校門にたどり着いた途端、ナイフが飛んできた。俺はそれを辛うじて避ける。ナイフは俺の後ろに立っていた木にサクリと刺さった。しかも、俺のみけんとほぼ同じ位置の高さにだ。
「いきなりナイフを投げてくんなよ」
「遅刻厳禁」
俺は目の前の女性に文句を言いながら立ち上がる。ちなみに時間を見てみるとまだ集合時間の十分前だった。
「まだ十分前だ、ろおおあ!」
更にナイフが飛んできた。どうやら文句を言うなと言う事らしい。ちなみにやたらナイフを投げてくるこの女性は梓鴉綾目。梓鴉は俺と同じ部活に所属し、一、二年ともに同じクラスだ。黒髪で長さは肩辺りまで、服装は上下きっちりとスーツを着ており、イメージで言うなら凛々しい女性。ただし何故かお面を常時装着している。故に俺は梓鴉の顔を見たことがないのだが。おそらくは俺だけではないだろう。
「他の皆は?」
「更衣中」
そして、口数が異様に少ない。会話というよりは単語を発しているような喋り方をする。
「じゃあ、俺も荷物置いてくる」
俺は後ろからナイフが飛んでこないか心配しながら教室まで向かった。さすがは私立というだけあり、校舎はかなりきれいに整備されている。俺は走って教室に入ると荷物を置くと、図書室へ向かう。俺たちの部室は図書室、の奥の方の倉庫みたいなところにある。
「たしか今日は新入生募集のビラを配るんだっけな」
今日、学校に早く来た理由はこのためである。新年度になって二週間。今のところ新入部員は一人というのが現実だ。五月までしか新入部員の募集活動が許可されていないのでそろそろ本気で集めないといけない。というわけでビラ配り。それが今日はじめの部活動だ。図書室に入る。すると、俺の目の前には三体の怪物が映った。
「出た、化物だー(棒読み)」
「ふふふ。引っかかかったわね」
「『か』が多いですよ、部長」
「食べてしまいますわよ、なんちってですわ」
「三人ともとりあえずここではアタマのそれ、取っときませんか?」
「そうね」
そういって、三人の怪物が頭を取りはずす。その中から出てきたのは三人の少女の顔だった。
「それにしても早いわですわね」
白鷺千代乃。我が部の部員で俺よりも一つ上の学年だ。どうも育ちが良いらしく、お嬢様口調で常に品格がある。スタイル抜群な我が部の副部長でもある。
「三鷹先輩、もう会ったと思いますけど、梓鴉先輩は」
「ああ、ナイフ投げられた」
時鳥夜菜桜。今のところ我が部唯一の新入部員だ。まあ、特に特徴がないのが特徴というくらい普通の女の子なのだが。この部に入った時点で異常なのだろうか。
「ほら、ちゃんと名札つけて」
そう言って、名札を手渡してくるのが我が部長、金糸雀響。ウェーブがかった金髪を腰まで伸ばしている。身長が小さめな為に小動物をイメージさせられる美少女だ。
「わかりました。じゃあ、そろそろ行きます?」
俺は名札を受け取る。この学校では勧誘行動するときには名札を付けないといけないらしい。
私服だと生徒かどうかわからないからだろう。俺は胸に『三鷹清斗』と書かれた名札をつけて、配る予定のビラを手に取る。名前の上に小さく副部長と書かれていた。ビラには俺たちの部活の名前と部活内容が色とりどりの文字で書かれていた。
『あらすじ部……いろいろなあらすじを考えて、なんか色々します』
かなり大雑把だな。
そして、我らあらすじ部は早朝の校門へと出撃した。
私立草紙学園高校。それは少し町から外れた場所に立地している進学校である。その草紙学園には、とある部活が存在していた。その部活は部活でありながら唯一部活の管轄外である部活。管轄外故に部室は図書室の奥にある倉庫が使われている。しかし、管轄外であるが故に生徒に与える影響も大きい。
生徒会と教職員と、その部活。
その様子を生徒はこう呼んでいる。
――草紙の三権分立、と。