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帝国とタラント

帝国が遂に動き出す



物語は新たな展開を迎える




第二章スタート

ミストクラウン帝国




首都ウェルター





ウェルターの中心に位置する王宮の政務の間に一人の男が入ってきた。



その男は筋骨隆々で、顔にいくつもの傷跡を持った、いかにも武人といった風貌であった。




玉座に座り込んでいた王はその男を見て不敵に笑う。



「ハンゲルグ将軍、待ちわびたぞ!!」



ハンゲルグと言われた男はその言葉に深々と頭を下げる。



「一二年間の停滞期を終え、今後どのように侵略するのか詳しく聞かせてもらおうか」



「はっ、では説明させていただきます。我々が今攻めるべき国はミリタリアです。前大戦、我々がタラントを攻め切れなかったのはタラントが北西に位置するミリタリアと南東に位置するコスクと同盟を結んでおり、首都攻略前にそれらが横から攻めてきたからです。」




「ふむ」



「そこでこの同盟国の一角であり、攻めやすい位置にあるミリタリアをつぶします」




「しかし、ミリタリアを攻めたところで、再びタラント、コスクが立ちふさがれば必然的に前回と同じ結果になるのではないか?」




「はい、ですからそうならないようにこの一二年策を練り、準備をしてきました」



そこでハンゲルグはおもむろに懐から地図を取り出した。




「まず、我々の隣にはミリタリア、タラント、ホムルンが存在します。

今、ミリタリアを侵略する際に一番注意すべきはタラントです。

隣国のため、攻める際にタラントが侵攻してくる危険があり、防衛に大幅に戦力を割かなければなりません」



周りの重臣たちが息を潜む。周囲は沈黙に包まれていた。




「そこでわたしは我々と同様に大陸統一を目指すミストラル帝国と密かに同盟を結びました!!」



(・・・・・・!?)



その言葉に場の空気が変わった。




「ミストラル・・・・・・と」



「はい。

ここでミストラル帝国にはタラントに牽制を仕掛けてもらいます。

これによりタラントは援軍を出せず、ミリタリアは背後のミストラルにも気を遣わなければなりません」




「むむむ・・・・・・」



周りの重臣たちが一様にざわめく。




「ホムルンとは不可侵条約を結びました。

コスクはタラントを経由するため、ミリタリアへの援軍は遅れることになります。

それまでにミリタリアを落とします!!」




その言葉にあたりは静まり返った。



しばらくし、国王がようやく重い腰を上げ、ハンゲルグに腕をかざす。




「見事な作戦だ!!今度の侵攻戦、期待しておるぞ。我が国大将軍ハンゲルグ・ボーアよ」




「は!!」




ハンゲルグは深々と礼をする。




その口元には不敵な笑みが浮かんでいた・・・・・・。










ガタン、という音と共に馬車が止まった。三日間の短い旅を経て、ようやく都へと着いたようだ。



周りは白や赤がメインの色とりどりの美しい街並み。それが均等に横へと並んでいる。



周りは人で溢れ、人々は皆、上物の服を着ており、都を一層彩っている。



(これがタラントの都、ピースバーグか!!)




初めて見る都はあまりにも優雅な場所だった。




「みなさん、これから役所へ行きますよ」




ファブル先生の声に従い、俺たちは役所へと向かう。




(・・・・・・すごいな)




都はなにもかもが華やかだった。











(・・・・・・でかい!!)



少し歩き、都の役所へとついたが、建物は想像していたよりも遙かに大きかった。



分厚い鉄の門は異様な威圧感を放ち、門の前にきたものを圧倒する。



「ここら任官を行う場所ですので、普通の役所はこんなにも大きくはありませんよ」



先頭にいる先生が皆の様子を見て言う。


しかし全ての者が建物の大きさに圧倒されていた。



「そこの者!!何用か?用件を言え!!」



門兵長と思しき男が高圧的な態度で尋ねてきた。



「私はファブル・フロイストです。プロシードから新兵となる二百名を連れてきました」




「ファブル様でありましたか。どうぞお入りください」




急にかしこまった返答をし、門兵長は近くの門兵たちに命令し、門を開けさせた。



門のすぐ後ろに建物への一本の道があった。俺たちはそこを通って建物へと入った。




「ファブル様ですね。すでに任官の準備ができております。私の後についてきてください」




建物に入ると大柄な男が俺たちを迎え、ついてくるように促した。



しばらく男について行くと、男は急に立ち止まり、前の扉を開けた。



その中はとてつもなく広かった。


奥には一段隔たりがあり、屈強そうな男たちが横一列に何人もいた。




「プロシードの訓練生を連れて参りました。」



「ご苦労」




男たちの中で一人だけ前に座っていた、目つきの鋭い男が受け答えた。



その男は整った顔立ちをし、頭が切れるという言葉が似合うような男だった。




男はゴホン、と一回咳をすると、目をかっと見開いた。




「私は政務を担当する役人のフォルドだ!!今からお前たちの任官を始める!!

全員、近づいてこい!!」


俺たちは言われるがままに段差のあるところまで近づき、次のフォルドの言葉を待った。



フォルドは俺たちをゆっくりと見渡す。




「では、これから任官式を始める。まず、ここにいる全ての候補生を正式にタラント国の兵士と認め、その任を与える。また、全員に士族の身分を与える」




その言葉に俺は驚いた。




(俺が・・・・・・士族!?)




「ついては各人の所属を決める。俺の後ろにいるのがこの国の将軍である。この将軍たちの中の一人がこれからのお前たちの上官となる」




「まずはリーファイ、ホフマン将軍の所属とす。次に・・・・・・」




初めは首席のリーファイから始まり、次は適当に発表されていった。




緊張で額に汗が滲むのを感じる。




「次にライ、ロゴウ将軍の所属とす」



俺の名前が呼ばれた。



ロゴウという将軍が俺の上官となるようだが、後ろの誰がロゴウ将軍なのかよくわからなかった。



しばらくして、サイの名前が呼ばれた。


どうやらサイも俺と同じくロゴウ将軍の配下のようだ。



「以上で発表を終わりとす。後は各将軍の指示に従うように。これにて任官式を終える」



そうすると、後ろの将軍たちが前に出て、配下の兵士を呼び寄せる。




「このロゴウの部下はここに集まれ!!」




その中でも一際大きな声を放つ男がいた。




ロゴウ将軍だ。



将軍は太い眉毛に、鋭い目つき、立派な口ひげと顎髭を持つ大柄な男だった。




「さっそく俺たちは演習を行う。これから都を出て、俺の駐屯部隊がいる場所へと向かうぞ!!」



その言葉と共にロゴウ将軍は段差を下り、ついて来い、と言って部屋を出て行った。




(どうやら俺たちは都を眺める十分な時間も与えられないゃうだな)




ロゴウ将軍とは随分と精力に溢れた将軍のようだ。




(だがその方がいいかも名。少しでも多く経験を積んでおかなければ)




皆が固まっている中、俺は真っ先に将軍を追いかけた。



外に出ると、将軍が門の前で立ち止まっていた。将軍の隣りにはファブル先生がいた。俺は二人の様子を見て、足を止めた。





「すみませんね。

少しだけ生徒達に別れの挨拶をさせてください」



「お前の頼みとあっては聞かないわけにはいかないな。はやくしろよ」




先生は申し訳なさそうに言い、将軍はそれを許した。




(ん?・・・・・・この会話)



話しぶりから察するにどうやら先生と将軍は互いに親しい間柄のようだ。



後ろからばたばたと他の生徒の足音が聞こえる。


しばらくすると、足音が止まった。



後ろを振り返ると皆あっけにとられた顔をしていた。




先生は全員がその場に集まったのを確認すると、俺たちをゆっくりと見渡し、




「皆さん、もう都を去ってしまうのですね

・・・・・・皆、頑張ってください」


とゆっくりと言った。


一言一言が温かみを持っていた。




「この一二年間、あなた達を育てることができて本当に良かったです。

この一二年間は私にとってはとても楽しい日々でした。

皆さんと別れれるのは本当に悲しいです。

ですが、これから先は私の助けはいりません。

自分達の人生が始まるのです。

そこからは自分の手で新たな自分の未来を切り開いてください。

・・・・・・皆さんの活躍期待しています。

私からはそれだけです」



聞いている生徒の中には目に涙を溜めている者もいた。



俺も先生の別れの言葉に強く胸を打たれた。




「また、プロシードに来てください」



そう言って先生は手をかざし、役所へと入って行った。




「全く、せっかくいいムードで演習に向かう予定だったのだが、あいつのせいで白けてしまった」



その将軍の言葉に耳を傾ける者は誰もおらず、皆先生の後ろ姿を見送っていた。



俺は先生が役所の中に入り、視界に映らなくなった後もずっとその光景を見つめていた。



「行くぞ」




不意に将軍は抑揚のない言葉を放ち、外へと出た。



俺は一瞬の後、将軍の方へと振り返った。




(そうだ、何も悲しむことはない

また会える

生きている限りきっとまた会える!!

今度会うときは戦場で武功をたててからだ!!)



ファブル先生との別れを終え、俺は新たなる舞台へと向かうため、目一杯将軍の下へと駆けだした。

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