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フィリピスの攻防 (6)

敵が薙刀を振り下ろす瞬間、横へと飛び込み、敵の攻撃をかわした。刃が足のすぐ横を通過する。


「ええい、ちょこざいな」



敵は反転し、またこちらへと向かってくる。今度は斜めに一振り。横へと飛んだ俺の銅をかすめた。



(駄目だ、このままではいずれ負ける・・・・・・)



一回、二回と敵の攻撃を避けるにつれ、体が重くなるのを感じる。また、先程の一撃が巻いていた包帯を斬り、また腹部が痛み出した。


敵がまた近づいてくる。俺はやむなく槍を突き出すが、敵はなんなくそれを弾いた。そして再び俺は馬にはね飛ばされた。


「ぐぼっ・・・・・・」



今度は受け身もとれなかった。腹部の出血が増すと同時に口から血を吐いた。

敵が再び反転する。



「どうする・・・・・・」



いつまでも攻撃を避け続けることはできない。一瞬、俺はある方法が思い浮かんだ。それとともにそれを打ち消そうとする考えも浮かぶが、全力でそれをかき消す。



(これは・・・・・・賭けだな)



俺は立ち上がると、槍を捨て腰の刀を抜く。


その様子を見て、敵将ロンメルは豪快に笑い出した。



「馬鹿め、長物を捨てるとは・・・・・・、勝負を諦めたか!!」



馬の腹を強く蹴ると先程と同じ動きで薙刀を振り下ろそうとする。



(・・・・・・今だ!)



「死ねえぇぇーーい!!」



敵が薙刀を振り下ろした瞬間、俺は腰を落とし、馬とぶつからない斜め横に飛び込んだ。薙刀の刃が腰を掠めた。俺はそれを気にせず、飛び込んだ勢いのまま敵の腰を切り裂いた。

甲高い悲鳴と共に敵は落馬した。



「はぁ、はぁ、やったか?」



息をつぎ、倒れた敵を見る。敵に動きはなく、近づくと敵は頭から血を流し、絶命していた。

俺はしばらく敵を見るうちにようやく自分が倒したのだということを理解した。



「・・・・・・あいにく俺はこちらの方が慣れてるのさ。必ずし長物が有利ではないのさ」



一つの物体となった老将ロンメルに言い放つと、腹を抑え、急ぎ前線へと走った。












前線と本陣の中央でロゴウは薙刀を振り回し、奮闘を続けていた。侵入した騎兵はロゴウの率いる騎兵のおよそ三倍の三千騎ほど。しかし、ロゴウの率いる騎馬隊は数で勝るミストラルの騎馬隊を押しつつあった。



「ハァァーー!!」



ロゴウの一振りで三騎の敵が切り倒される。それでも敵は怯まず突撃してくるがそれもロゴウは容易く切り裂いていった。不意に敵の動きが止まった。次の瞬間、ロゴウの前にひとりの大柄な男が薙刀を片手に向かってきた。


男の薙刀とロゴウの薙刀が激しくぶつかり合う。互いに一歩も譲らず、一際大きな音が地を震わせた。二人の周りに土煙が舞う。


「貴様がロゴウだな」



男はロゴウに向かい、にやりと笑う。



「かく言う貴様はボレア将軍か」



ロゴウも男を見ると、少し口角を上げた。次の瞬間、弾けるような音と共にどちらも後ろへとさがる。そして、再び両者はぶつかり合った。


ロゴウの突きをボレアは柄の部分で防ぐ。そして、それを払いボレアは薙刀を下から振り上げる。それをロゴウは体を傾け、かわした。そして今度はロゴウが攻撃を仕掛けるも先程とは違う大勢でボレアは受け止める。



二人の実力は拮抗していた。二人の攻防により、近くの兵には偶発的に斬られる者や風圧で落馬するものが相次いだ。


近くにいたカフカはロゴウの助太刀を試みるも周りの敵兵に邪魔され、向かえずにいた。


二人の打ち合いはしばらく続いた。次第にどちらも疲れを見せ始めた頃、後方で突如、異変が起こった。



「後方に新たな敵軍が!!」



近くの兵の予想外の言葉にボレアは思わず首を傾けた。その方向には遙か遠くからタラントの軍が接近してくるのが見えた。


しかし、その一瞬の間にロゴウの一撃への対処が遅れ、不安定な体勢にて受け止め、体が馬上にてぐらついた。


その瞬間、ロゴウの薙刀がボレアの胸を貫いた。


「ぐぼっ・・・・・・」



胸を貫通した刃を見て、ボレアは血を吐いた。左手で薙刀を抑えるボレアにロゴウは素早く腰の刀を抜くと、ボレアの首を切り裂いた。



「敵軍総大将、ボレアは討ち取った。この戦、我らの勝利だ。皆一気に切りかかれ。」



その言葉と共に敵は慌てて逃げ出し始めた。怒りに向かって来るもののいたが、ようやく到着したカフカの騎馬隊にて一掃された。


ロゴウは柵の外へと敵を追い出すと、突如援軍にきた味方の旗を見た。



(あれはホフマンか。・・・・・・どうやら向こうは早く片付いたようだな)



敵は後退を始めていた。こうして、開戦十日、ようやくフィリピスでの戦いは幕を閉じた。

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