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フィリピスの攻防 (5)

前線破れる


ライ、強敵との戦い



開戦から半時、ロゴウは険しい表情で前線を見つめていた。前線では一列目の者はすでに倒れ、二列目以降の者が戦っている。ロゴウは中央の伍の動きを見ていたが、その中でも最初に目に止まったのはワグナーの伍だった。




(即席とは思えない連携した動き。それだけでなく、個々の力も強い・・・・・・何よりも闘争心が湧き出ている)




しばらくその動きを観察した後、他の伍にも目を移す。




(他にもいくつかそのような伍はあるがその数は少ない。・・・・・・やはり、最終的には数で押し込まれるな)




あと一時間ほどで前線は突破される、そうロゴウはにらんでいた。ロゴウはしばらく考えた後、カフカを呼びつけた。




「今すぐ騎馬隊を集めろ、俺の合図ですぐにでも出撃できるようにな」



「はっ、しばしお待ち下さい」




ロゴウは一目見ると、また前線に視線を戻した。



(これは賭だな・・・・・・だがこの場面でうてる唯一の手だ)










開戦からおそらく一時間が経った。俺は四列目の者に後を任せ、後方で休憩をとっている。敵に斬られた腹は思ったよりもたいしたけがではなく、体は腹の傷よりも敵の返り血で真っ赤になっていた。おそらく、六、七人は殺したかもしれない。


俺は鎧を脱ぎ、腹に包帯を巻いた。斬られた時の出血の割には思ったよりも浅い傷だった。


水を飲み、前線に戻る準備をしたとき、前線で大きな悲鳴が聞こえた。




「柵が破られたぞ!!」



「敵の騎馬隊だ!!」




俺は前線の異変に、急いで立ち上がり、鎧を着け、槍を持った。


前線を眺めると中央の柵が破られ、前線の兵士が騎馬隊に吹き飛ばされるのが見えた。




(あれは俺の伍がいた場所!・・・・・・それにあの騎馬隊、真っ直ぐ本陣に向かっている!将軍が危ない)




本陣は部隊を纏める司令塔であると共に、最後の砦だ。俺はすぐさま本陣へと向かった。




「全軍、突撃!!」




耳を襲う大きな音と共にいきなり、本陣からロゴウ将軍を先頭に敵に向かって味方の騎馬隊が駆け出した。




(何!?)




将軍は向かって来た敵兵を次々と切り倒す。




「前線を守る歩兵に通達。敗れた柵から来る騎兵は通して構わん。皆、他の柵の維持に尽力を注げ。侵入してくる敵は俺が押し出す!!」




将軍はまるで、無人の野を駆るかの如く敵を切り倒す。




(すごい・・・・・・)




俺はその猛攻にしばし見とれた。




(よし、前線に戻ろう。残してきたウィーカーさんやワグナー伍長達が心配だ)




俺は急ぎ、足を前線へと走らせた。


辺りは馬の足音や刃の交わる音が入り混じっていた。陣には敵兵が少なからず侵入し、乱戦となっていた。




(前線は?前線はどうなった?)




ようやく陣の端の柵がはっきりと見えてきた。中央の敗れた柵から入ろうとする敵とそれを防ごうとしている味方兵士、またその邪魔をする敵とが入り乱れている。その中に敵と交戦している俺の伍の四人がみえた。




(まだ全員生きてる!!)




俺は足を早めた。


そして、あともう少しといった所で馬の蹄の音が近くから聞こえた。

音のした方向を振り向くと敵騎兵が薙刀を俺に振り下ろす直前だった。


俺はぎりぎりでその攻撃を持っていた槍で防いだが、そのまま馬にはね飛ばされた。



鈍い音と共に後ろへと体が吹き飛ぶ。間一髪で受け身をとるも、完全には衝撃を抑えられなかった。



「ぐっ、・・・・・・何だ!?」




立ち上がり、相手を見る。俺を跳ね飛ばした敵は薙刀を持った、顎に白髭生やした老将であった。




「ほほう、一歩兵の割にはなかなかやりおるわい。よく聞け!我が輩はボレア将軍直属の百人将、ロンメルである。悪いが、前線の者どもには死んでもらう。兵どもの進行が遅れるでのう」




敵が薙刀を一振りし、馬の腹を蹴る。




(来る!!)




俺は敵を真っ直ぐに見つめ、槍を向けた。

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