フィリピスの攻防 (1)
ついに開戦
戦いは熾烈を極める
昼下がり
皆が柵の内側で槍を持って待機している。
俺と伍のメンバーは前方左側の五列目に配置された。
皆が静まり返っていた。
前方にはミストラルの大軍が整列して突撃の準備をしている。
皆がいつ敵が突撃すれのかと緊張していた。
ロゴウ将軍が前方部隊に近づいてきた。
「皆、注目!!
この戦にタラントの命運がかかっている!
皆が本気になればこの戦、絶対に負けることはない。
必ずここを守りきるぞ!!」
オオォォー、と歓声が起こる。
すると、向こうからも歓声が聞こえた。
そして敵は一気に突撃をかけてきた。
土煙が上がる。
(いよいよだ・・・・・・)
俺は敵の近づく音を聞き、槍を握る手の力を強めじっと前方を見つめた。
敵がどんどん近づいてくる。
俺は第一陣がぶつかり合うのを静かに待った。
すると後方の弓兵が一列目に割り込んできた。
「弓兵構えーーー!!」
将軍の言葉で弓兵をつがう。
すると、突然前方から悲鳴が上がった。
(!?)
見ると、近づいてくいた敵が地面に足を埋めたまま、棒立ちとなっている。
(落とし穴!!)
それも敵を完全に落とすものではなく、敵の足を封じるものだった。
これによって敵の勢いが弱まった。
「今だ!!弓兵、罠にかかっていない敵兵を狙い撃ちにしろ!!」
将軍はそれにたたみかけるように命令する。
次の瞬間、動きの止まった味方の兵に邪魔をされ、動きがもたついていた敵兵に容赦なく弓が浴びせられた。
バタバタと敵が倒れていく。
敵はその死体によってどんどん動きを鈍らせた。
「次、第二射、放て!!」
将軍は第二射、第三射と敵に次々と弓を浴びせる。
敵の死体がどんどん積み重なっていった。
しかし、程なく敵は味方を突き飛ばし、踏みつぶしてこちらに向かってきた。
しかし、またもや敵の一部が落とし穴にかかり、弓の餌食となる。
これにより、敵が柵まで近づいてくる頃には相当数の被害を出した。
弓で対処しきれなくなると将軍は弓兵を下がらせて、槍兵を前に出した。
そして、ガギンという高い金属音と鈍い肉を裂く音と共に、ようやく両兵は激突した。
敵兵が一昨日作った落とし穴に引っかかっていくの見たロゴウ将軍はゆっくりと笑った。
「うまくいったな、お前の策は」
話しかけられた副将カフカは静かに笑った。
「ええ、敵はいきなり前方に障害物が現れたことにより完全に棒立ちです。
敵は体のいい的と成り下がっています。
戦では死んだ者よりも負傷した味方のほうが重荷になりますから」
そう言ってカフカは不敵に笑った。
「ですが、これも一時しのぎです。
すぐに敵は乗り越えて向かってくるでしょう」
その言葉通り、敵は罠を乗り越え、こちらに向かってきた。
「できることはしました。
これから先は我が軍の力を信じるのみです」
「うむ」
すでに兵同士がぶつかり合っていた。
ロゴウはそれを静かに見ていた。
半時が過ぎた。
未だに前線は敵の侵入を許していない。
(これならいける!!)
ロゴウは手に力をこめた。
すると、後方で異変が起きた。
「報告!敵軍が後方より接近して参りました。
その数おおよそ八千」
ロゴウは伝言兵の言葉を聞くと、ようやく来たか、と一言呟く。
「カフカ、後方の指揮をとれ!
前線は俺が見る」
そうしてカフカは去っていった。
前線では未だ熾烈なを繰り返している。
状況を確認していると、突然左右から弓が飛んできて、前方の兵を襲った。
「何!?」
左右を振り向くと敵が山の中、弓をつがえていた。
(左右からの遠距離攻撃!!
まずい・・・・・・!!)
すると、前線から悲鳴が上がった。
左端の柵が崩れ、敵が侵入し始めていた。
それを見て、ロゴウは歯をギリッと鳴らすと、すぐさま指揮をとった。
「左を守っている五列目の者に侵入する敵を当たらせろ。
ただちに柵の隙間を埋めるのだ!
弓兵は敵弓兵を迎撃!」
兵がせわしなく動く。
前線は変化し始めていた。