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開戦前夜

ミストラルの大軍が徐々に近づく


それぞれの将軍達の思惑


そして、開戦の予兆を感じライは・・・・・・

ミストラル帝国侵攻の報が届いてから二日が経った。



敵はすでにパーミム地方を攻略しつつあるらしい。



将軍の見立てではあと一日ほどで敵軍がフィリピス地方へと侵攻してくるとのことだった。



現在、俺たちはフィリピスと隣りのベルン地方の境界に近づいていた。



そして近づくにつれ、足場の凸凹が目立ちはじめ、歩きにくくなってきた。



正面には山が二つある。


山が左右に来たところで行軍が止まった。



「よし、ここに陣を張るぞ!

陣の範囲など細かいことは百人将が指示をするように」



その言葉とともに陣作り始まった。



陣幕を張り終えると、敵をくい止めるための柵を作ることになった。



俺の伍は作られた柵を地面に埋め込む仕事をした。



穴を掘って、その中に柵の先端を入れてそれを埋め込むという単純な仕事だった。



夕方には作業も終わった。



その夜、食事をしていると一人の背の高い男がやってきて、俺の伍やその他の伍に話しかけてきた。




「副将のカフカだ。

皆よく聞いてほしい。

あと二日で敵がここまでくる。

皆が周知のことであるが、ここはベルン地方との境であり、ここを抜かれれば敵は一気に都へと近づく。

もちろんベルン地方にはいくつかの城があるのでしばらくはもつだろうが、長期戦となれば今後の戦では我が国はかなり厳しい状況に陥る」




カフカは苦々しい顔をしてゆっくりと話す。



緊張と沈黙が場を支配した。



静まり返った中で、カフカは額に汗を流し、眉間にしわをよせて、俺たちの様子を確認したのち、話を続けた。




「敵はわずか二日でミーパム城をおとした

そしてそのうちの二万と我々は戦うのだ」




(二万!?)




この話を聞いた誰もが驚愕した。




(我が軍の五倍・・・・・・)



俺は額に流れてた汗が目に当たるのを感じ、手で拭った。



(まさか初陣がこんなにも大きな戦になるとはな・・・・・・)




ガギリと歯を強く鳴らす。



緊張が増すと共に兵の中には恐れを抱く者もいた。




「圧倒的な兵力差に臆す者もいるだろう。

だがこの地は攻めるのは難しく、守るに易い。

左右には急な山の斜面、敵は正面を攻めるのみだ。

臆することはない!

地の利は我らにある!

必ず守りきるぞ!!」




その言葉に歓声が上がった。



カフカはその後、本陣へと戻っていった。




(そうだ、明日はあくまで防衛なんだ

こちらが負けなければいいんだ)




皆の歓声を聞き、力がわいてきた。




(そうさ、返り討ちにして武功を立ててやる)




その夜は皆がお祭り騒ぎのようだった













大きな音をたててミストラルの二万もの大軍が移動していた。



その先頭にいる馬に乗った男は後ろを振り返り軍勢を見てにやりと笑う。



(この軍勢がおればタラントの弱兵など一瞬で壊滅できる)




クックッ、と男は小さく笑った。



すると偵察に向かった兵が戻ってきた。




「報告!敵はフィリピス地方とベルン地方の境に陣を敷いてる模様」




それを聞いた男は斜め後ろにいた小柄な男に尋ねた。




「モラルよ、敵軍についてどう思う?」




尋ねられた男、モラルは男を真っ直ぐに見つめる。




「はっ、敵軍の陣を張ってある場所は左右を高配のある山で囲まれているため二方向でしか攻められません。

おそらくは敵を殲滅するにはこちらは敵の倍の数の被害がでるかと」




モラルは淡々と説明した。



すると男は不敵に笑う。



「それも致し方あるまい。

明日突撃を決行する」




その言葉にモラルの隣りの男が前に出る。




「お待ち下さい。

敵軍はあの勇将ロゴウです。

その配下はいずれも精兵です。

早急な攻撃は得策ではないかと思われますが」




それを聞いた男は意見を述べた男をにらみつける。



「ヴィルドよ、主の言葉もよくわかる。

だが、敵はたかだか四千だ。

敵はおそらく我ら二万の大軍に恐れおののいているに違いない。

こちらが一気に攻めれば間違いなく敵は崩壊する」




男は語義を強めた。




「ではモラル、全軍に合戦用意。

山を登って背後にまわる別働隊の指揮を任せる」



モラルはその言葉に深々と頭を下げた。




「はっ、ボレア将軍」




そうしてタラントの脅威は刻一刻と近づきつつあった。









パチパチと松明が燃える音がする。



皆が寝静まった後、俺はウィーカーと共に見張りを行っていた。



夜の冷たい風が俺を襲い、たまらず腕を組む。



すると、今まで黙っていたウィーカーが俺に話しかけてきた。



「なあ、明日初陣だろ?

お前相当緊張してるだろ」




「緊張してますよ。

集団での模擬戦もまだですから」




俺は淡々と答えた。



するとウィーカーは憐れむかのような眼で俺を見てきた。



しかし、俺はウィーカーの考えているように自分が不幸だという思いを抱いてはいなかった。



確かに最初は二万と四千という圧倒的な兵力差に圧倒されたが、冷静に考えるとこちらは地理的条件が圧倒的に優位だ。



今ではむしろ早めに実戦を経験できて良かったと思っている。



(これは武功をたてる最大のチャンスだ。

そして、この初陣が俺の帝国への復讐の前哨戦だ!)




俺は緊張とは別の思いが体を震わすのを感じた。


そして、それを無理やり抑えてウィーカーに顔を向ける。




「そんなことはないですよ。

これは俺の夢の第一歩となる戦いですから」




大将軍になるための・・・・・・





そして俺の復讐の・・・・・・




俺はゆっくりと空を見上げた。



今日は満月で澄み渡った空だった。




(嵐の前の空・・・・・・かな)




きっと明日の戦いは激しくなるに違いない。



何の確証もなかったが俺はそう確信していた。

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