表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽王の世界 ―黎明―  作者: 檀徒
◆第三章◆
83/86

81話 イデア

 狐につままれたような顔をしたオロチが、同じように首を傾げた配下を脇に従えて芝生を踏みながらやってくる。対するこちら側の騎士も全員、同じような顔をしている。何が起きたのか、1時間が経過しても謎に包まれていた。殺気は削がれ、ただ頭の中にあるのは疑問だけ。


 つい先ほどまで激しい戦闘を繰り広げていたにもかかわらず、この不思議な雰囲気に飲み込まれた地球の騎士たちの方が、疑問の度合いは大きかったようだ。理屈では分かっていても、実際に遭遇しなければ分からない奇妙な空気がその場を支配していた。


「オロチ殿」


「ふむ…」


「少し分かったことがあるので、先ほどの話の続きをしよう」


「ふむ?」


「オロチ殿は何故、遺伝子改変と魔獣化を成し遂げようと思ったのか。それは世界の征服でも考えていたのでは?」


「ふむ、そうだ」


「でも今はそんなつもりも無い」


「…?」


「何故あのような禍々しい魔獣の形になろうとしたのか、誰が考えたのか分かるかどうか」


「ワシが考えたのだ」


「いいや、多分違う」


「は…?」


「そうしなければいけない気がしていなかったか」


「……そうだ。お前を殺さなければいけないと」


「本当に殺す必要があったんだろうか。正直なことを言わせてもらえば、オロチ殿、あなたの政治能力では、世界を手に入れたとして発展は無い。それは自覚しているでしょう」


「……自覚が無いと言えば嘘になる」


「なのに、何かに駆られた。無意識にやっていた。ウイングを騙し、火星まで手に入れて。でもそれはヤマタイより縮小しているじゃないか。そこまで火星が欲しかったのか」


「…いいや。何故だ」


「結論を聞きたいか?」


「もう、ここまで来れば謎を…何故このような不思議なことになったのだ」


「それでは話そう。オロチ殿、あなたは既に死んでいたんだよ。ずっと自分の脈も計っていなかっただろう」


 俺の言葉に驚いたオロチはすぐさま左手の付け根を、皺だらけの右手で探り出すが、俺の言葉どおりの結果に表情が歪んでいく。


「…無い…無い! 脈が無い!? …いつからだ!? いつから…」


 オロチの反応に、彼の配下たちがどよめく。まさか長い間死人に仕えていたとは思わなかったのだろう。


「11年前だろう? その肉体はもう虚像なんだよ。だから高次加護が使えた。外にいた兵士たちも、実体は死んでいたんじゃないか? 障壁が破れて酸素の濃度が変わっただけで死んだぞ」


「ヤマトタケルを殺したときからか。いや、その直前か。ワシの心はあのとき、黒い闇に包まれていた」


「一族の末席が国主である自分を差し置いて、その上に立とうとしたからか?」


「おそらく、そうだ。それで、ワシはこれからどうなる」


「あと少しすれば肉体が崩れて死ぬんじゃないか? 死を理解してしまったわけだし」


「そうか…。ハハハハハ!」


「400万人も殺したんだ。魂は引き裂かれるぞ。永遠に近い苦しみを味わうかもしれない」


「そうだろうとも。それで、ワシにこんなことをさせたのは誰だ」


「神じゃないか? オロチ殿の心に巣食ったんだろう」


「神がこんなことをするわけが無いだろうが?」


「闇黒神、と言えば伝わるか」


「そ、それは…。言われてみればつい先ほどまで、そういう表現をしたほうが良いものが心の中に居た。それが今、ここに居ないのは?」


「どう転んでも思い通りに人間を動かすのが無理になったから、逃げた。しかし400万人の魂は喰われたようだ」


「魂を喰うとは?」


「争えばそれだけ負の力を持った魂が生まれ、漂う。それが闇黒神の力の源」


「だから人を争わせようとするのか?」


「そう、たまたま強く魂が結びついた人間を利用して、さらに争わせようとした」


「ふむ、合点がいった。だが何故そのような結論が」


「あの禍々しい姿、どう見ても尋常ではない。オロチ殿はあれが本当に自分で考え出した姿だと?」


「今となっては…」


「あの姿が暗黒神の、この次元に落としたときの姿なんだろう。つまりあれがもう一体いる。しかしこの結論もつい先ほど辿り着いたもの。そう、この力を手に入れたせいで」


 右手に数々の属性を同時に発現させて凝縮し、そこに乗せる心は「愛」とは少し違うのだろうが、「慈悲」と呼べるであろうものではあった。細かな雷光が腕の周りを覆うが、それがオロチの使っていたものと違うのは加護流それ自体が生命反応のように変化していることだ。その光は暖かく、その場に居る者全てを柔らかく包み込む。戦う力ではない、護る力だ。


「ワシのが闇黒神の力ならば、それは…」


「そう、これは太陽神の力。今なら分かる。この世は恩でできている。そして5つの属性に全てが集約される」


「元素などでできているのではないのか」


「5属性理論を古い考えと侮ることはできない。元素の状態は個体、液体、気体、熱体、そして光体の5つに。次元の状態は空間、時間、加護、因果、そして慈愛。最後の要素を虚数へ落としたのが闇黒だ。全て、5属性でできている。これらが地、水、風、火、そして光なのだ。これを、魂によってしか見えないもの、『イデア』と呼ぼう」


「そこまで力の根源を理解している人間に、ワシが敵うはずもないな。潔く、地獄へ行くとするか。ああ、体が動かしにくくなってきた」


「ああ。そうして罪を償え」


「裁きを受けるときがきたか。お前たち、地球とは二度と争ってはいかん。どんなに闇黒に包まれても、我らは『イデア』の子…」


 少しずつ、少しずつ体の末端からオロチの体が崩れ出していく。砂のように儚く、濃い緑の芝生の上へと、命は零れていた。主を失った衣服がふわりと地に落ちるのを、俺たちは静かに見守っていた。

戦闘来るか!? 

と思ってた方すいません、ヤマタノオロチとの戦闘は

何の邪魔も制限も無いところでやってもらいますんで(´Д`;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ