昔日
――あの日、俺はユリカを中央公園へ連れ出していった。
「カケル!? はっ…話ってななななな何っ!?」
どうもユリカは勘違いしている。絶対に勘違いしている。そんなに緊張されるとこっちまで緊張してしまうじゃないか。
「うん、話っていうのは大事なことなんだけど」
「だだっ、大事なこと!? そんな、カケル……」
うわあ、暴走してるなあ。ユリカは顔を赤らめて俯いてしまった。すまないがそういう話じゃない。それに俺たちは中学3年生、まだ15歳じゃないか。そういう暴走をするには早すぎるぞ。
「2年後、17歳になって適正試験を受けたら」
「受けたら…?」
「一緒に騎士になって旅に出よう!」
ユリカは、俺が口に出した言葉が予想外だったのか、完全に思考が止まってしまったようだ。要するに口をぽかーんと開けている。
「2人で冒険をしないか?」
「あっ!? そういうことね! もちろん、私もそのつもりよ!!」
重ねて言うと、やっと理解してくれたようだ。ユリカは俺の手を取って可愛らしい笑顔を俺に向ける。だが少し残念そうなのは、勘違いが突き抜けていたせいだろう。どうしてそうなってしまったのか? それはユリカが超のつくほどそそっかしい子だからだ。
道を歩けば転ぶのは当たり前、転んだ拍子に腰巻がめくれて下着が見えてしまうのも当たり前なら、下着が見えていることに気づいていないのも当たり前だ。なんでここまでそそっかしいのか? その答えはなんとなく分かってはいた。大局観が皆無というか、周囲が見えていないのだ。もちろん騎士になるための制約の影響で、ユリカがそうなっていることも分かっていたけれども、それでもモノには度ってものがある。とにかく酷いのだ。
「俺はユリカと、一緒に冒険がしたいんだ」
その言葉に、手を取りながら飛び跳ねるようにユリカは喜びを表現していた。そんなに飛び上がったら腰巻がめくれて…ああやっぱり。そしてまた気づいてないわけだ。今日は白か…。
俺たちの騎士の道があれほど大変だとは、あの時は少しも考えていなかった。その物語は静かに始まり、やがて熱を帯びていく。そこにあったのは、興奮と緊張の日々だった――