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討伐ギルドに関しては、本当に珍しい存在。
平民が剣を持つこと自体が珍しいのだ。
剣を作るのが平民でも、持って戦うことはない。
剣を持つことは許されているが、命の危険があるというのに戦うのはおかしい、そう言った理由だ。
戦争が行われる時のために週に一度訓練することがあるが、それは対人用。
平民が貴族に税を納めているのは、領主だから、という理由もあるが、魔物を討伐しているという点が多い。
貴族が集まる討伐遠征の他にも、その地に魔物が問題を起こせば、その地を収める貴族が討伐しなきゃいけない。
遠征が行われるのは、あまりにも数が多かったり強さが強い魔物が現れたり、現れやすい地域の安全のためだ。
ウェーマミ伯は現れやすい地域というわけじゃない。
それに、討伐ギルドがある。
遠征に行く理由はなんだ。
「ねぇ、今回の遠征は数?強さ?」
「どっちも」
「フェル兄様」
「アル兄様に詳細を伝えておけって言われてな」
「ノックしてください」
「ごめんごめん。でも伝えておきたい。今回は海ってだけじゃない。本当に危険な遠征だ。その分アンジェの得られる情報は多いだろうけどな」
よしよしと頭を撫でながらする話じゃないですよ兄様。
でも、どちらも、となるとなにかある気がする。
「どこの貴族もこの遠征に疑問を持ってる。けど、ウェーマミ伯の申請に対して王族は許可した。しかも、第1王子も行くと来た。難易度は高いぞ」
「その遠征に討伐ギルドは参加するの?」
「いいや、でもそばに入るように伝えてあるらしい」
「第1王子がいるなら必要なさそうにも感じるけどね…」
この国の王家は代々受け継ぐ神の加護がある。
魔法とは違う、別の力。
まずこの国ができたのは、魔物から身を守るために作られた騎士団からだった。
魔物の力は強く、守って欲しいと強請る者らが多い中、騎士団は救いに救いまくった。
騎士団の中心人物は御伽噺にもなっており、神の加護を得ている。
王になると表明すると、その加護は代々受け継ぐようになった。
男女関係なく、1番初めに生まれてきた子が加護を得ている。
その加護の効果は王族のみが知っており、私たちはよく知らない。
けど、加護を持つ王族が遠征に行くと、どんなに苦しい遠征でも死者数は少ない上に、加護を持つ者は怪我一つしない。
本当に加護というものは特別なものだ。
「そうだ、ミラ、お前も付いていけ」
「えっ」
「討伐する時は別にいいぞ。ただ、あそこの坊ちゃん、いい印象がなくてな…」
「あ、フェル兄様も感じてたんだ」
「口悪いだけだが、なんかムカつく。多分、アンジェに対してグチグチ言うから、愚痴の相手になってやれ」
「かしこまりました!」
「ははは兄様わかってるね」
けど、私暴れたりしないんだけどなぁ⁉︎
まぁいいや。
ミラがいるなら観察後の相談相手になってくれるし。
遠征前日。
「来たかバレリアン家。そして、小さいお嬢ちゃん。毎度思ってるけど、遊びじゃないんだよ遠征は。帰りな」
「しっかりと王族に許可は得ています」
「そりゃ、優秀なバレリアン子爵に言われたらそうなるだろうよ。けど、ガキはガキだ。邪魔なんだよグズが」
あ゛ん゛?
喧嘩、勝っていいかな。
まかせて私神様相手に喧嘩腰だったかは行けるいける、こんな口の悪い伯爵家の跡継ぎボコボコにしてやるわ。
「アンジェ落ち着け、」
「でもフェル兄様、こいつうちの家を小馬鹿にしたようなもんじゃん」
「一応立場上だから、な?」
「はぁ」
ボソボソと兄様と本人の前で話す。
私が大人でよかったなグズが。
大人な対応してないけど。
ミラを呼んでくれて助かった。
宿に待機させてるけど、家に帰ったら速攻愚痴ってやる。
うちのメイドの情報網舐めるなよ。
使用人界で、従いたい主人ランキングワースト1位にしてやるわ。
そんなランキングあるのか知らないけど。
今日は顔合わせだ。
貴族が集まると言っても、行ける貴族のみだ。
領地で大変なことが起こっていたり、気分じゃなかったりすると行かない貴族なんて者はたくさんいる。
行かなすぎたら王家に目をつけられる上に反乱起きるけど。
「やぁ、バレリアン子爵」
「これはこれは、レナンド殿下。お久しぶりですね」
「元気そうで。今日も娘の参加に許可いただきありがとうございます」
「いえいえ、魔法についての研究がこんなに面白いものなんて、と、娯楽の一つとなってますし、国の発展にもつながると思っているので」
初めて会ったが、この王子、勘が鋭いな。
国の発展、か。
今回の遠征で防御魔法について成功し、発表すると同時に、この国はきっと一目置かれる。
まだ詳細を発表してはいけない。
情報とは国を守る盾だ。
他国で使われるようになれば、戦争に使われかねない。
圧倒的に死者数が減る、それが防御魔法だ。
ま、きっと使えるのは魔法の練習をしてきて、魔法疲れに慣れた人のみだけど。
「そう言っていただき、ありがとうございます」
「いえいえ。この天才一家を敵に回したくないって言うのもありますよ」
「ご冗談を」
ざ、王子っという金髪碧眼イケメンというビジュ、眩しいな。
彼の首元には、八芒星の模様がある。
きっとこれが、神の加護の証だ。
なんとなく、懐かしい、あの神の空間と同じ感覚がする。




