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11歳。
つまりは愛おしい姉が18歳になった。
学校を卒業して、この家から出ていってしまう、そんな時期。
前世の両親と妹へ送る手紙でも、このことを話して寂しさを伝えた。
ほんと、リン姉様にはお世話になった。
侯爵家はここよりも裕福で、辺境にも近くない。
強くてかっこよくて可愛い姉様が幸せになるのは分かっているけど、やっぱり寂しいものは寂しい。
「泣きそうな顔しないの」
「また会える?」
「もちろん。家族である事は変わらない」
「あの、アンジェ?そろそろリンジェを返してほしいんだけど…」
「姉様、あいつに何かされたら絶対私に言って!侯爵であろうとボコボコにしてやるから!」
「本人ここにいるのに言うかな⁉︎」
「えぇ。お願い」
「しないでくれる⁉︎」
フランザード侯爵家であるブラフベッド様はユーモアあるお方で、姉様ともちゃんと両思いだ。
次男のフェル兄様曰く、学校でも強くてかっこいいカップルで有名だったんだとか。
そりゃ美人で芯の強い姉様だもの、当たり前よね。
「それ、私も参加していいかい?」
「あ、アルフリーヒ様…」
「怖がらなくても良いじゃないかブラフベッド」
「あっははは…」
次期侯爵が次期子爵に怯える姿は、うちの長男が剣で魔物をバッサバッサと倒していく姿からだ。
うちの家、強い人しかいない。
次男も次男で恐れられており、一応アル兄様には婚約者がいるが、フェル兄様には婚約者がいない。
フェル兄様もモテる上にありとあらゆる成績がいい。
魔法しか努力していない私よりもとんでもなく恐ろしい人だ。
家族相手だとシスコン発動するけど。
「げっ、フェルーヒ!」
「げってなんですか義兄様」
「兄弟揃って恐ろしすぎるんだよチクショウ…」
「うちの姉泣かせたら…」
「泣かせるわけないだろ⁉︎まず泣くような女じゃ、」
「何か言いました?ダ・ン・ナ・サ・マ」
「イエ」
本当に、強い兄弟たちだ。
私この家に生まれてきて劣等感を感じないの愛のおかげだよな。
私に婚約の予兆はない。
きっと、右手にある模様のせい。
私はこれを隠そうとはしない。
パーティでも、嫌な目を向けられて友人などいない。
でもそれでいい。
失敗した過去の分を思い出して魔法文化を発展させる。
それを忘れる事はない。
それに、私には家族がいる。
家族らは最初私に魔法を見せる素振りさえしなくなったが、生まれた世界を離れて最初に決めたことを辞めるわけにはいかないと、魔法に触れさせてくれるようにお願いした。
それを許してくれた彼らの愛さえあれば十分だ。
「それじゃ、行ってくるわね。手紙書いて、貴女の魔法研究の事、たくさん教えて」
「うん。リン姉様。愛してます」
「私もよ」
耳のそばにチュっと音を立てる。
そして、懐かしく額にもキスを。
これで最後じゃない。
家族という絆は、どこにいても強く結ばれている。
会えない、前世の両親と、妹のように。
馬車が見えなくなると、私とミラは急いで中庭へと急いだ。
あと少しで完成の、防御魔法がついに完成しそうなのだ。
「ミラ、もうちょっとゆっくり作っていってもいいよ。まだ実戦用のための魔法じゃない」
「はい」
まずは氷魔法からやっていっている。
しかし氷は氷。
大きく作るまでに、2年もかかった。
攻撃魔法は危険度が高く、実験はできない。
結界魔法なんてものも考えたが、技術が上がってからじゃないと難しい絶対。
魔法付与、なんてものに関しては、攻撃魔法が出来てからの方が絶対にいい。
より安全で、1番研究しやすいのが防御魔法。
魔物はたまに魔法を使う。
駄々を捏ねて魔物討伐に連れていってもらって本当に助かった。
魔物は無意識にも魔法を使っている。
火を吹くとか、風で切る、なんていうのは攻撃魔法のテンプレじゃないか。
防御魔法も見えてないだけで使っている。
あれは光魔法。
魔物っていうんだから、闇魔法とか使うと思っていたけれど、そんな事はない。
種族は関係してはいるが、個体差がある。
火山や氷山に住む魔物は深い波を持つことが多い。
耐性と、保温のために火と氷、どちらも使うのだろう。
そのため、魔法に長けている。
体温管理しなくてもいい場所のうちの一つの森は、魔物は物理的な攻撃だったり、防御魔法に長けている。
草原はいろんな魔物がおり、差が激しいためよくわからない。
けど、魔法に長けているわけではなさそう。
火の波は激しく、水は滑らか、風は素早く、氷は穏やかに、土は固く、闇は潜って、光は高く。
他にも属性はあるが、まだ研究中だ。
あと、神の技は魔法ではない。
しかし、私が神になるといっても出来ないとは言わなかった。
それに、家族へ手紙を送ると同時に神への手紙も送って返事ももらった。
あなたと同じ神になれるのか、という質問に、なれるときた。
それなら諦めるわけにはいかない。
良いことか悪いことか、わたしの右手にある模様は魔法を使いすぎると全身にまで伸びるが、伸びれば伸びるほど波が操りやすくなる。
不気味で怖い印象となるが、痛みが出るわけでもないため無視するが、使いすぎがよくわかるため、顔に広がると休憩を強制される。
疲れが取れたら完全にまた右手に引っ込むんだけど。




