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一言では言い表せないほどのことだ。
でも、その言葉だけで全員が微笑んだ。
「わたし、ずっとずっと、部屋に引きこもって、嫌な謝り方しかしなくて、たくさん心配かけたのに、もっと心配させるようなことして、言い付けさえ守っていればって、そんな気持ちばっかで、みんなのこと、全然考えられてなくて、こんなわたしでごめんなさいっ、」
「でも、この家にずっといたい!みんなと一緒にいたい!元の生活に戻って、楽しいおしゃべりがしたい!許されるなら、ここで、また、みんなで、幸せになってもいい、ですか…」
ぐずぐずした喋り方。
鼻水も垂れて、鼻声で。
そんなわたしに1番に抱きついてきたのがメイだった。
彼女も泣いていた。
「当たり前です。わたしに取ってアンジェ様は、大切な人です。誰が拒みましょう。ここにいる者全員、アンジェ様が大好きなのです」
また声をあげて泣いてしまった。
10歳の子供としては、はしたない。
それでも、私の家族はみんな許してくれた。
メイの次は母様、父様、兄様と私を抱きしめてはキスをしてくれた。
私はこの世界できっと、ここ以上にあたたかな場所をしることはないだろう。
この世界で、この家で生まれてきてよかった。
謝罪が終わると、みんなでパーティをした。
少しずつ紅茶を飲みながら、小さく切ってくれたスコーンをゆっくり噛んで、飲み込んだ。
その姿だけでみんなは喜んでくれた。
甘やかされてるなぁと泣き笑いながら、身分なんて関係ないようにみんなでワイワイ、楽しく過ごした。
「アンジェ様が立ち上がってから紹介しようと思っていた人がいるんです。ミラ、おいで」
「は、初めましてアンジェ様、えっと…その、」
「私の子なんです。私が家でもアンジェ様の話をするからか、私もお使えしたいと」
「いい、の…?わたしで、私よりもリン姉様とか、」
「いえっ!私は、えっと、アンジェ様があの部屋の中でずっと苦しんでいたの、知ってます。そんな中で立ち上がって、ああやって謝って、強い方だと言うのはわかっております。まだ8歳の身でメイドなど、恐れ多いのですが、一緒に成長を、その…しませんか?」
ミラの黒い髪はなんとなく、日本を思い出させる。
彼女の瞳は、あの日の丸のよう。
彼女の波は、激しくも穏やかで、広く深い。
この世界で見たことのない海のようで、とても懐かしく思えた。
「ミラ、これからよろしくね」
「はい!」
そこから1年後、魔法の練習を始めた。
この世界に来てから8年経たせた方がより安全だと考えたため1年先送りしたが、知識として本を読み漁った。
1年の間で私は結構甘やかされた。
たくさん食べれるようになったおかげか、お菓子を持って来られらようになった。
メイが食べ過ぎは良くないからと、管理はさせたが、それでも多かった。
お菓子を食べる時はミラと一緒に食べた。
運動をしようと一緒に走ったり、運動したいからと、2人の兄の剣の指導に混ざったりもした。
元の肉付きには戻ってはいないが、それでも順調に体調は戻っていった。
それで魔法についてだが…
「つっかれる…なにこれ、ほんと、やば…」
「休憩されてください、流石に頑張りすぎです。倒れますよ。それに、模様が顔にまで広がってますし…」
「ミラ、ちょっと水ちょうだい。休憩する」
「はい!」
魔法というものはとても疲れる。
走ると疲れるのと同じ。
サーフィンなんてした事ないけど、魔法を使うというのは、自分の体の中にある波と万物に存在する波を繋げて、波を使いたい属性に乗りこなさなければならない。
そして難しいのが、場所によって違うし、魔法を使えば使うほど自身の波の深さが変わる。
きっと深さは魔力量と関係しているんだと思う。
広さは多分波を操る速度が変わる。
広いと穏やかにしやすいが、激しくしにくい。
狭いと激しくしやすいが、穏やかにしにくい。
完全に波が止まることはない。
それぞれ微調整が必要で、とんでもなく疲れる。
なんていうめんど苦しいものだろう。
救いなのが、私の波が狭く穏やかなところだろう。
そして丁度私の隣には広く激しいミラがいる。
こういう時の場合は、氷も火もつかえる。
土は見たことないのでどんな波からわからないが、私の知る限り、私のミラは全ての魔法の属性が使えるだろう。
あと、他の人には波が見えないらしい。
ミラには私が転生者だということは伝えた上でその話をした時に知ったことで、ミラ曰く、魔法が存在しない世界で生まれてきたからこそ、違和感を抱いて気付いたんだと言う。
この子絶対優秀だと思った。
絶対天才。
生まれつきこんなに深いとか、ほんと、ほんと!!
「な、なんですか?」
「いやぁ、うちのミラって才能に溢れてるなぁと」
「褒められても、アンジェ様を甘やかすだけですよ」
「これ以上甘やかされたら私の貴族生、今後破滅する気がする…」
たまに見た悪役令嬢みたいな。
ま、公爵とかと関わる事はきっとないが。




