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5歳になって、風呂上がりだ。


「ねぇ、髪を乾かす時、火と風の魔法を使ってるの?」

「はい。熱かったでしょうか」

「んーん。どうやってやるんだろって」

「アンジェ様が8歳になったら教えて差し上げます」

「まだ3年もあるじゃん」

「仕方のないことです。さて、乾きましたよ」


私のメイドのメイはウチで働くメイドの中でも魔法を使う人だ。

私の世話に付きっきりだが、私が生まれる前は母様の世話係だった。

彼女も私を溺愛してくれている1人で、5歳になったと言うのに膝の上に座らせて絵本を読み聞かせてくれる。

しかし絵本はほとんど読んだ。

同じ本ばかりは嫌だと言うと、困ったように笑う。

好きな話はと言われても、その話ばかり聞いていたら飽きてしまう。

普通の小説でもなんでもいいのに、5歳と言う年齢が邪魔をしてくる。


「ねぇ、魔法使ってるところ見たい」

「それは…」

「だめ?」

「魔法というものは大変疲れるものなのです。希望を叶えてあげたいのですが…」

「お願い、だめ?」

「うっ、水を出す程度であれば…」


近くに置いてある花瓶を取り、目の前に置かれる。

そして指先からほんの少しずつ水が流れた。

詠唱はない。

そしてどの魔法もほんの少しずつばかり。

本当にこの世界の魔法は神から見て発展していないのだろう。


「もうよろしいでしょうか…」

「あっ、ごめんね疲れたよね」

「いえ、申し訳ございません、少々部屋から退室しても?」

「うん。ゆっくり休んで」


魔法を使えば疲れたような様子を見せる。

演技なのか本当なのか。

メイは本当に忠誠心の高いメイド。

嘘をつくようには見えないため、髪を乾かしてくれた後だと言うのに魔法を使ってくれたことに感謝しなければいけない。

でもなんとなく魔法の使い方がわかった。

なぜ8歳にならないと使えないのかはまだわからない。

けど、それを知る前に好奇心が勝ってしまった。


魔法は生まれた時から不思議と感じていた波から生まれる。

波は自分の体の中と万物に存在する。

凝視することでなんとか波が見える。

人それぞれ波の高さ、広さ、深さが違う。

高さは感情に繋がっている。

さっきのメイは波が不安定になってしまっていた。

本当に申し訳ないと思っている。

魔法は波に乗ればいい。

火なら激しく、水は滑らかに、風は素早く、氷ならゆっくり。

この4つしか見た事がないからハッキリとは言えないが、波への乗り方なのだろう。

私の波は今は穏やかで歳のせいか他の人より狭いがメイと同じくらいの深さはある。

だから、きっと使えるはずだ。


ゆっくりと波を感じていく。

使ってはダメと言われているから風を。

素早く、波を捉える。

するとどうだろう、ほんのりと風を感じたではないか。

そして嬉しくなり、自分の部屋を出て母の部屋へ行った。

この時を私は後悔することになる。


「母様!見てみて、私、魔法が使えたの!」

「な、」

「みててね、風、風、」

「やめっ、!」


ひゅうとさっきよりも大きく爽やかな風が母の部屋を通る。

それと同時だった。

全身がふらつく。

激しい気持ち悪さ。

目の前が黒と白でチカチカし、体が動かなくなって倒れてしまう。

母様が叫んでいる。

なのに全然聞こえない。

チカチカして、見えなくなっていく。

どうしてこうなった?


私が目を覚ました時、すでに8歳になっていた。

体は骨ばかりが見え、家族は皆泣いた。

そして、目覚めてすぐに気付いた。

母様が大事にしていたネックレスが、父様が家宝だと言っていたブローチが、アル兄様の剣が無くなっていた。

そしてなにより、メイの顔には大きな傷が出来ていた。

8歳にならないと使えない理由は、最悪の場合死んでしまうからだという。

後遺症として、呪いのようにわたしの右手はあの時と同じ波と同じ形をした黒い模様が出ていた。

私が生きている理由は何人もの治癒が使える人を雇い、ずっと治癒させていたから。

魔法は便利だが長時間は使えない。

それを私はちゃんと知っている。

3年間も治癒できていたのは金で雇っていたから。

その分があの3人の宝物のものだ。

そして、メイの傷は全身にあった。

メイは自分のせいだと言った。

自害しようとしたが、それは母により止められ、ああやって傷で終わらせたらしい。

しかし、そっちの方が苦しい事ぐらい母もメイもわかっていた。

メイは幸いすでに旦那さんがいて子供もいるため出会いに影響はないが、それでも体の傷の影響で魔法が使えなくなっていた。


私はやってしまった事に対して後悔ばかりだった。

好奇心のせいで、私は、大切な人たちの、大切なものを奪ってしまった。

部屋に引き篭もった。

ごめんなさいと泣く日々。

毎日家族が慰めてくれるが、彼らが大事にしていた物は思い出が詰まっていたし、メイへの気持ちが大きかった。

何か食べなければいけないのにスープしか口に通らなかった。

こちらは不定期更新となります

亀さんで申し訳ない

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