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「私の首元の神の紋が気になりますか?」
「えっ、はい…」
「代々王家に伝わる紋で、黒いせいでよく目立つ。隠す気なんてないですけどね。貴女の右手も、素敵だと私は思います」
「ありがとう…ございます、」
他人にこの手を褒められたのは初めてだ。
きっと皮肉などではない。
彼の本心からだ。
それが、なんだか嬉しくて、あのグズのことなんて忘れかけたぐらいだ。
「タラシですか?」
「初の会話でそれはないよアルフリーヒ。あと私には婚約者がいる」
「ならよかった」
「バレリアン家の家族愛は噂以上だね」
「ははは、殿下、他の方にも挨拶しないといけないのでは?」
「そうだね。じゃあ、ここで失礼するよ」
アル兄様、私別にその人にキュンと来てないです。
ざ王子っぷりにびっくりしただけで。
にしても、今回は人が多い。
第1王子が来ており、安全だから多いんだろうけど。
遠征を嫌がる貴族は多い。
ほんと、この貴族社会が腐ってないのは聖人殿下がいるおかげか?
「あ、ブラフベッド」
「げ、見つかった」
「逃げることはないじゃないか。君も陸だろ?お願いがあって」
「一緒にアンジェを守ればいいんだろ。他の貴族はアンジェの右手を怖がってて何するかわからないし」
「正解。私は魔物から守る。君は人から守ってくれ」
「え、そこボクの立場じゃ?」
「お父様、前も言いましたが我が家の主でしょう。仕事量が違います」
しょぼくれる可哀想な父に苦笑いを向けてやる。
私の研究は助けがあってこそだと言うのを忘れちゃいけないな。
本当に恵まれた環境だ。
ちらほらと聞こえてくる、私の右手に対する言葉。
「またいるのか」
「呪われないか心配だ」
「邪魔なだけなのに」
「あいつも魔物だったりして」
「魔法の研究なんかどうにもならないのに」
こんな言葉は聞き慣れた。
いつもこういう時、フェル兄様が私と手を繋いでくれているおかげか、家族が私の前と後ろにいるおかげか。
なんと言われようと、私は神と約束した通り、世界を発展させる。
そして、この世界で神になって、あいつらを、ざまぁしてやる。
いいじゃん、私の御伽噺はざまぁで決まりだ。
「よろしくね、アンジェ」
「はい、義兄様」
「うん。いい子だ」
軽く頭を撫でられる。
うちの姉様は、本当にいい人と結ばれたんだなと幸せに思う。
寂しいけど。
さっき逃げようとしてたけど。
遠征当日。
海は綺麗で、太陽の光をキラキラと反射している。
そして昨日食べたご飯(海鮮)は美味かった!
フェル兄様はすでに船に乗っている。
そして船は、砂浜から大体500メートルくらいしか離れていない。
でも、そこではもう魔物と戦っていた。
船の大きさが確か30メートル程で、それと大きさが同じかそれ以上⋯
「アンジェ、来たぞ」
「えっ、もう?」
「ああ。早いな。絶対に離れるなよ」
「うん」
陸地に上がってくる魔物は、大体肺呼吸もできるらしい。
ていうか、魔物という存在自体が不思議な生き物だった。
ツノが生えているだけのクマや、おっきな虫、寄生虫の魔物だっている。
全部が全部、進化する上で本当に必要か?と疑問を持つような特徴ばかり。
絶対創造主適当に作ったろ!と言いたい。
今陸地に上がってきたのは、亀や細長い魚。
ウツボとはまた違うけど、小さめだ。
船組は大きな、、あれはイカ?と金魚みたいに赤い魚と戦っている。
あっちの方が苦戦するっていうのに、危険度が高いせいで人は少ない。
その代わり、王子が乗っているけど、いくら加護を持っているからって、やっぱり危険すぎる。
「兄様、船ひっくり返ったりしない…よね?」
「わからない。けど、あそこにいるのは泳げる人ばかりだ。ただ、水中で剣は振るえない。落ちたら終わりだ」
なんか、前世でどっかの絵で見たんだけど、なんかの生き物、イカか、タコが船をひっくり返すやつ…
そうだ、クラーケン!
実際のやつはもっと大きいんだろうけど。
イカでもタコでも、吸盤がある。
それにあの巨大、簡単に船なんてひっくり返る。
やばい、やばいやばいやばい、
死んだりしないよね。
例え魔法でどうにかしようと考えても、あんなに離れていては絶対に届かない。
まず、今の段階で生成と防御魔法もどきしか出来ないんだから!
「第1王子を信じろ。アンジェ、鱗の強い魚がそろそろ来るぞ」
「う、うん…」
最悪なことは考えるな。
相手は人間じゃない、魔物だ。
知能なんてものはない。
だから、事故がなければ大丈夫。
絶対に、大丈夫だ。
陸に上がってきた魚は確かに鱗があった。
その鱗は分厚く、剣がなかなか通らない。
その波は、他の波と少し違った。
激しいのに、固い。
なんて言ったらいいのか、どう表現したらいいのかわからない。
けど、激しく動いているのに、固くて、いや、柔軟?
あの鱗は、反射神経が動いているのかと思うほどに、剣が当たると同時に瞬時にそこだけ固くなる。
これはきっと、人間には真似できない。
人間には鱗がないから。
じゃあどうすると鱗のように守ることができるのか。
攻撃を予測しなければ、あんな風には出来ない。
反射的に防御魔法が使えるのは、防御魔法に慣れてからじゃないと。
波を止めるということは出来ない。
固まる、え、片栗粉的な?
あ、片栗粉




