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ただの大学生であり、どこにでもいるただの一般人。

そんな日本人でも神隠しに会うことがあるらしい。

そう、これは神が人間を誘拐しているのだ!


「おかしいでしょ!普通私選びます!?」

「だって、キミ異世界ものの話好きじゃん?」

「にしても、大体冒頭はトラックに引かれてとか、ブラック会社の疲れでとか、小説を読んでいたらとか!私の場合、道歩いてたらいつの間にかここ!」

「キミ、神様相手によくキレれるね。他の日本人敬語だったよ」

「いや誘拐犯に敬意払っても」

「あはは」


白い空間が天の空間だと思っていた私にとって、ここは仕事部屋だというのが丸わかりなほどに、ディスクみたいな四角いものがそこら中に浮いていた。

世界観が私の住んでいた場所と同じだったり、神の言った異世界みたいに見たことのない生き物がいたり、生き物すらいない場所だったり。

同じ世界観もあれば、違う世界観がある。

もしかしてこれ全部を神は管理しているとでもいうのだろうか。


「正解」

「そうか創造主だから心読めるんだ」

「神にプライバシーとか言わないでね」

「私を誘拐した時点でもう終わってるんで」

「えー異世界興味ない?」

「話そらしたな。まぁ、神に権利あれこれ言っても無駄か。ははは」


乾いた笑いをするにしても、この神はミジンコも悪いとは思っていないのだろう。

たくさんある人間の中で私を誘拐した時点できっと誰でもよかったのだから。


「もっと救いがない人生を歩んでいる人を選べばよかったのに」

「一度だけ選んだことはあるよ。でも、彼は世界を滅ぼした。誰でもやり直しというものは出来ないんだ」

「その人が幸せに生きるための環境づくりでもしたの?」

「神にとって、世界は神1人につき何百もあるもののひとつ。簡単に生み出せるし、簡単に壊せる。他の神に渡すことも、自慢することも」

「私の創造主は最低クズだったってことね」

「えぇ」


認めていることがこんなにムカつくだなんて思ったことなかった。

歴史の授業を全く聞かず、政治なども興味がない私にとって、宗教とかどうでもいいと思っていたけれど、この神を見てそれが可哀想だなんて。


「貴女ほど神についてグチグチという人が初めてなので口を滑らせすぎたかな」

「どうでもいいくせに。どうせ人は神を心のどこかで信じてるものだし。ねぇ、家族になんて言えばいいの。手紙くらい渡したいんだけど」


どうせこの神は帰してはくれない。

こうやって話してはいるけど、神としてのクズっぷりがわかってしまうのみ。

だったらもう受け入れる方が早い。

効率厨じゃないけど、この神と同じ空間にいたくなくなってきた。


「中身さえ私に確認させてもらえれば年に一度。貴女の家族には話を通しているし」

「神だと名乗って?」

「えぇ。何不自由ない生活さえ送ってくれればと。あと、貴女が就職後仕送りしたであろう金額の倍は与えるよ」


家族に会えないことを除けばいい条件。

一応そこは考えてくれるのかと見なおしてしまうところだった。


「何したらいい?」

「私の世界を成長させて欲しい。魔法、使ってみたいだろ?」

「はぁ、」

「神もね、大好きなんだよ漫画とかアニメとか。だからそういう世界を作るし。ただ興味がある。神が干渉せず作られていく異世界に」

「ふぅん。でも元はアンタが作ってるんでしょ。じゃあ私は価値観を作り出したい、的な?そんなの1人じゃ無理に決まってる」

「いいや、今回君と話してて確信した。君ならできる。私が嫌いなら価値観だけでも貴女が神になればいい。それを咎めたりはしない」


本当にこの神は干渉するつもりがないらしい。

そこまで言うなんて。

何百も世界を見ていれば1つが変わったところでどうにもならないということか。


「わかった。じゃあ一つお願いするけど、その世界に私が死んだ後も干渉しないで。魔法が使えるんだよね。不老の魔法でも作り出してやる。そして、アンタと同じ存在にでもなるさ」

「他の世界の人を入れるくらいは許して欲しいんだけど」

「それだけなら」

「よし。ではどうぞ行ってらっしゃい。可愛い私の娘」

「アンタに娘なんて言われたくないよ創造主」


少しずつ目の前が暗くなっていく。

自分の瞼なのか、それとも見えなくなっていっているのか。

あの神が作った世界がどんなものなのかを考えながら、ゆっくりと家族の顔を思い出しては謝った。


「うまれ、た…?」

「生まれたよ!キミと、ボクの子だ!」

「えぇ、えぇ…本当に、よかった…」

「安心してアレリー、可愛い君に似た女の子だ」

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