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終末世界のアンドロイドの話。

作者: deftmikan

3199/4/3 6:30:00

損傷確認...

右腕部の肘関節の摩耗。交換必須。

両脚部の一部の皮膚が欠損、コードが規定の位置に収まっていません。

動力炉の燃料タンクの破損。

左眼球のレンズに微小な傷。

その他損傷部200。交換推奨部分は100。交換必須部品1。


インターネットに接続...電波を確認できないため不可。

残り容量20テラ。

ウイルスの存在...なし。

データの損傷...なし

各種ソフトウェアの異常...なし

システム異常...なし

人格プログラム、覚醒モードへ移行。


機械音声が頭に響く。


「ん...朝かぁ」


自分の体に刺さっているコンセントを抜き、少し伸びをする。廃ビルの5階で太陽の様子を確認する。


「おー、明るーい。元気そうだ」


さて、今日は関節の部品を探しに行こう。


五十年も前に戦争が起きて、人類はほとんどが滅び去った。僕はその戦争に参加した軍人だ。その時にいた友人はほとんど死んじゃった。

戦争は大統領が負けを宣言した時に終結したけど、お互いの国家が疲弊してもはや国としても動いてなかった。だから、そのまま瓦解して人々は各地に散った。同じアンドロイドの人たちも多分散っていったんじゃないかな。ここ十年近くそういう精密機械も見てないけど。


何百年も前の型式の古いアサルトライフルと戦争が終わる前、最新だったレーザー銃の入ったリュックと、リュックサックを持って廃ビルを出る。

エレベーターは電力がないから動かない。階段は崩れ去ってほとんどない。だから、自家製のハシゴで昇り降りしてる。


「...あちゃー」


その肝心のハシゴがなんかの動物のせいで壊れてた。多分イノシシかなぁ?

二つ下の階までは階段が続いてるからそこまで行って、飛び降りるかなぁ。


キノコや苔などの自然豊かな階段。壁は塗装が完全に剥がれてところどころに鉄筋がはみ出しててそこそこ危険。強めにぶつかったら軍用のフレームでも歪むから気をつけないと。


三階まで降りた。窓の近くまで行き、下の階に飛び降りる。これを繰り返して一番下の階まで来た。ここは戦争当時、敵軍に占領されてたから一階はGになってる。


太陽を背にして、歩く。


車も走っていないひび割れた道路のど真ん中で、何千年も前の歌を歌う。


「Daisy,Daisy Give me your answer do...♪」


昔から大好きだった曲。ご先祖さまが歌ったって話。


寂しい寂しい無人街を僕の歌で彩りながら、行進を続ける。


所々には打ち捨てられたバイクや僕の同族、ちっさい生き物達に食い荒らされた死体がある。バイクは解体して後で回収しに来る。


今度は壊れた戦車。キャタピラは完全に切れており、車輪も外れている。運転席の部分に大きいあなが一つと、横っ腹に機関銃の弾痕がある。そして、砲塔のあちこちが凹んでいる。砲塔には西側の国旗(敵軍の国旗だ)が描かれている。


運転席の穴の中に入ろうとしたら、骨と穴だらけの服になった兵士がいた。遺骨を服で包み、一旦外に出す。後で弔うつもり。敵軍だけど弔う気持ちぐらいは持たないと軍人として、人として失格だと思う。人じゃないけど。


壊れた計器、錆び付いた砲弾(信管は抜かれている)、そしてガソリンエンジン。プラ製のタンクに入っていて、まだ使えそう。そんなものたちを戦車の上に並べていく。


ハッキリ言って、あまりいい物は無かった。スマホは画面が割れてるし、銃はどっか行ってなくなってるし。まともな電子機器はN社製のゲーム機だ。この会社のゲーム機はほとんど焼け焦げても正常に動くという恐ろしい生命力を持っているから、50年放置されても大丈夫だったんだ。...いや、よく見たらこれ、100年以上前の相当古い型だ!骨董品的として価値あるし、売ったらいくらになるかな〜。...国も経済もないのにどうやって売るんだろう。


長方形の機械に、正方形な画面。電源ボタンを押せば、ドット絵が画面上に表示され、N社のロゴと犬と卵のロゴが出てくる。ハマっていたカセットはピンクの悪魔のゲーム。この人は相当やりこんでいたようで、裏ステージもクリア済みだ。


荷物入れに収納し、再び歩き出す。


倒壊したビルを迂回し、良い感じの木の枝(いつになっても木の枝は探したくなる。...え?ならない?)を探しながら歩いていたら高い廃ビル街が気がつけば低い廃ビル街になった。

工業地域に来た。


この工場跡地にはアンドロイド関連の工場が多かったはず。しかも、僕を製造した企業の傘下の会社の工場だったから、交換が出来る。規格が同じって良いね。


工場のラインを見る。

コンベアの上には僕の右腕と同じものが沢山転がっている。これの関節部分の部品は同じだから、解体して僕の左腕に移植する。


リュックサックから工具を取り出し、ネジを回す。

肘の部分だけにしたら、僕の腕を外して肘の部分を取り外す。

解体した肘部品を僕の腕にくっつけ、元通りにする。


左腕はよく動くようになった。ついでに僕の右腕も交換しておく。そしてリュックサックに腕を三つほど入れる。台車が欲しいなぁ。







「荷物を置いてけぇ!」


盗賊だ。わー、こわーい(棒)

こんな廃ビル街にも人間はまだいたようだ。しかも、盗賊をして生活ができる程度には。人間の集落があったりするのかな?

盗賊は三人。軽トラに乗って一人がライフルを構えている。他の奴らは拳銃を構えて左右で構えている。


「残念、僕の荷物は腕と銃しかないよ」


「じゃあ銃を置いていけ!」


パァン

盗賊が威嚇射撃で僕の足元を撃つ。

脚パーツの替えってのは無いから当たったら怖いんだよなぁ。


背中のアサルトライフルを高速で取り出し、撃った男の心臓に照準を合わせ、撃つ。

銃声が三発。一つは心臓を狙った銃の音。二つは僕を狙う銃の音。

弾丸は十時にクロスする軌道をとり、交わる点に僕がいる。右に素早く避け、男二人に銃弾を放つ。

ライフル男は心臓から血を吹き出して倒れ、他2人は腹や腕を抑えている。移動しながらの射撃だと照準が合わせずらくて仕方がない。


頭に銃弾を放ってトドメを刺す。頭から血を流して倒れた。


軽トラの上にいた男の血を掃除して、晴れて僕専用の乗り物が手に入った。これはガソリン車らしく、給油口が着いていた。

...にしても、なんでこんな古い車が残ってんだろう。戦争してる時にはほとんどEVになっててガソリン車なんて絶滅してたのに。


エンジンを起動する。ブルゥンとエンジンの音が鳴る。


アクセルを踏み、タイヤは回り出す。長らく車道として機能していなかった道路が久しぶりにその役割を果たした。

走る先は太陽の方角。







僕が夜を過ごした廃ビルにあった残りの荷物を全て軽トラに載せ、再び走る。特にアテはない。あるとするなら、北に行って、なんか良いものをゲットしてきたい。そんなところ。


森とは言ったけど、けもの道しかないような場所じゃない。細い道路の脇に植物が異様に沢山生えてきているだけ。...緑化が激しすぎて建物がほぼ原型を留めていないけど。植物の根っこに縦に貫通されたり根っこで柱を破壊されて倒れてたり。植物のちからって強いね。


ギリギリ残ってた狭い道路を軽トラで走る。倒壊したビルや根っこで通れない場所があるが、その時は迂回している。


自然の要塞を進んでいたら自然の衛兵さんが現れた。

巨大な毛むくじゃらの体、頭の右半分が機械で出来ていて、背中からはハリネズミのように円筒型の同じ機械が無数に生えている。肩からは砲台が突き出ているが、片方はひしゃげてまともに使えない状態だ。そして四つん這い。...要するに生物兵器として改造された熊さんだ。


軽トラから一旦降り、軽トラから離れる。僕の部品が全部載せてあるトラックだ。破壊されたら困る。


背中から突き出た機械が射出され、僕に向かう。彼我の距離は30m。


レーザー銃を取り出し、CPUの性能をフルで使って反応速度を10倍に引き上げる。


迫り来る無数(大体50個くらい)のミサイルに銃の照準を合わせ、トリガーを引く。


ミサイルを青白い光の筋が貫通し、ミサイルは空中で爆散する。爆風で他のミサイルも誘爆し、遂にはミサイルは全滅した。その爆風で出来た砂埃に混じって熊から発射された砲弾が僕を狙う。斜め前に前転して砲弾を避ける。


背中で爆風を受け、ライフル銃に武器を持ち替える。熊が居たはずの場所に三点バーストで撃つ。即座に返ってきた音は地面に銃弾が突き刺さる音だった。


次に来た音は砲弾が放たれた音で、真右からやってきていた。


ライフルで信管に衝撃を与え、空中で爆散させる。破片をその辺の木々で防ぐ。


木々は爆風や破片によってミシミシと音を立てながら、ものが燃える時特有のパチパチという音を出しながら倒れる。


今度はミサイルが四方からやってきている。だが、それらは僕に命中するコースを辿っていない。僕を四角で囲むようなコースだ。


大きく上に跳躍して避けると、砲弾がさっきまでいた場所を通過し、地面を直線状に抉っていた。しかし、不発だった。


砲弾が放たれた方向にライフルを3点バーストで二回射撃する。


今度は当たったような音が返ってきた。生々しい、血が飛び散る音だ。


地面に着地し、そのまま走って熊の方へ行き、ライフル銃を背負って手榴弾を取り出す。

熊は目を抑え、もがき苦しんでいた。


手榴弾を手に持ち、歯でピンを咥えて抜く。グリップは握ったままだ。


熊はすぐさま僕に向かって走り出し、右腕で攻撃してくる。その時、口を開けて咆哮をあげていた。大きく開いた口に僕は手榴弾を投げ込んだ。

手榴弾は内部で爆発し、熊の口から黒い煙が血と共に吐き出された。熊はこの瞬間を持って絶命した。


この死体に取り付けられた兵器はほぼ全て取り外し、砲とその弾薬以外は埋めた。ミサイルは流石に使えなさそうだったが、砲は戦車に取り付けられるような無反動砲をそのまま取り付けたものだった。ちょっと改造すれば軽トラにも載せれるかな?


この日は、もう寝る事にした。ぽやしみ。




3199/4/3 17:56:48

人格プログラム、休眠モードへ移行。

戦闘後の自己診断。

脚部パーツへの高負荷による摩耗。交換推奨。

CPUの過度の発熱により、演算速度低下。冷却器故障。交換必須。機能停止の危険性あり。

他パーツ、新たな異常なし。

キャッシュの削除...完了。

本部への報告...不可。

自己診断及び報告を終了。3199/4/4 6:30まで機能を停止する。

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