第4話 よく眠ること。
「さて、お嬢様、歩くのには慣れてきたようですので、そろそろ階段を上る練習を始めましょう。」
「はい!」
練習場所はあらかじめ探しておいた。
屋敷から少し離れた倉庫の外階段。3階建てなので、まあまあ段数もある。
「上るときは杖を使って頂いてもいいのですが、問題は下り、です。下りのほうが膝に負担がかかりやすいので、これは無理かな?と思ったら、一段ずつ降りてきてください。転落防止のため、片手は必ず開けるようにしてください。ですから、、、杖は、二本まとめて持ってくることになりますが、、、、どうでしょう?手すりがあるので、手すりを使ったほうがいいかもですねえ、、、まず、やってみましょうか?」
「はい!」
今日もお嬢さまはやる気いっぱいだ。
歩き初めのころから、風呂上りに侍女に頼んで、マッサージもお願いしてはいたが、この方、、、一言も弱音を吐かない。
中庭を突っ切って、屋敷のはずれの倉庫に向かう。
杖を使っての歩行も綺麗なフォームになってきた。いいね!
「では、今日は一往復のみです。明日も一往復。明後日から2往復、、、という具合に、徐々に回数を増やしてまいりましょう。」
「はい!」
結局、神殿の階段にも手すりはあることから、手すりを使っての上り下りとする。
下りがな、、、、膝が抜けたりすると厄介だから、、、、安全に行こうと思う。
今日もお嬢さまはシャツにスラックス。もちろん、股ずれ防止付き。それでも、まだしばらくは赤くなるだろう。階段の前で、靴と靴下を脱がせる。
「実際に、裸足で歩くことも経験しておきましょう。最初は、足の裏が荒れますが、、、いいですか?」
「はい!」
素直に育ってるなあ、、、屋敷の侍女の話だと、この人は、父親の喜ぶ顔のために、ケーキをもりもり食べていたらしいから、、、、食べないと心配されるからね?と。
「では、ゆっくりでいいですからね?」
軽く手すりを握りながら、ゆっくりと慎重に階段を上っていくお嬢様。前を真っすぐ見ている。
スラックスから出た真っ白い足が、一段づつ階段を踏みしめていく。
*****
「では、ゆっくり立ち上がる練習を始めましょう。立ち上がる、だけですよ?」
いつもの筋トレの後、ベットから足を下ろした状態で、騎士にゆっくりと手を引いてもらう。小鹿の様なぷるぷる震える足。怖いよね?
中腰になったあたりで、中断させる。
「もう一度!」
いやあ、、、、どうかな?
三回ほど挑戦して、何とか立ち上がる。
ゆっくりとベットに座らせて、今日の練習は終了か?
「どこかに大きな風呂でもないかしら?」
私の独り言に、隣にいた騎士が、
「え?ここの従業員用の風呂は、かなり大きいですよ?温泉を引き入れているらしく、かけ流しで、綺麗ですし。ちょっとぬるめですが。マリエ様が入られるので?」
「!!!!!」
それは調査不足だった!!!!ラッキー!!!
朝食後に十分に休んだ後、ジーク様と騎士を風呂に連れて行く。もちろん、着衣のままだ。二人で風呂に入ってもらい、ゆっくり立つ練習をする。いいな。ここで、歩く練習まで出来るぞ!!!もともとあった岩盤をくりぬいた造りらしく、底はざらついていて、滑る心配もない。薄ーーーい板一枚向こうは女風呂か?
のぼせる前に、上がってもらう。
客室は沸かし湯だ。気が付かなかったなあ、、、、
「今日は、今まで使っていなかった筋肉を使ったことと、温泉に入ったことで、疲れが出ます。良く寝れますよ?」
「・・・・・」
返事くらいしろよ?ま、、、いいか。
気分転換に、リーゼ様の部屋を覗いてみる。
朝の練習後に足の裏を確認したら、真っ赤だった。血が出ていないのが幸いだ。少し冷やすように言っておいた。
リーゼ様は水を張ったたらいに足を入れたまま、領地の会計報告書に目を通しているところだった。
「先生?どうされましたか?」
優しくて、素直で、真面目で、知的で、、、、まあ今は、体形が体形だから、美人、というのも何なんだけど、、、
「お茶を入れましょうか?」
可愛い顔してるけどねえ、、、、何が、不満なんだろう、あの男?