第3話 食べること。
リーゼ様は今朝も元気にぴょんぴょん跳んでいる。まあ、今のところ、地面とそんなに離れてはいないが、、、、
杖を2本使って歩くのにも慣れてきたようなので、きちんとした歩き方を指導する。
「下を向かず、常に前を見て。胸を張って。踵から降ろします。踵から降ろした足が、地面を踏んでいきますよ?そうそう!手は大きく振ると、あら不思議、足も前に出やすくなりますからね。」
「下を向かず、、、、常に前を見て、、、、、胸を張って、、、、」
呟きながら、お嬢様は黙々と歩いている。
歩き出してから、早、一週間。当初はひどい筋肉痛になったが、彼女は止めなかった。股ずれは、擦れる部分に、タオルを縫い付けてみた。杖を握る手のひらも水膨れになった。持ち手に皮を巻いていたのだが、もう一枚巻いてみた。あまり太いと握りずらいので、ぎりぎり。
早朝の運動の後、朝食は粥。今は、少なめの柔らかめの普通食になった。
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「ど、、、、どうされましたか???」
ベット脇で蹲るジーク様を抱え起こす。側付きの騎士を大声で呼び、ベットに戻してもらう。
「・・・・・」
「ははーん、、、いきなり立とうとしましたね?あせってはダメですよ?」
「・・・・・」
少しやる気が出てきたのか?まあ、それが早く王城に戻るためでも。
「では、今日から、まず、座る練習を始めましょう。」
「座る?」
「ええ、そうです。座るには、いろんなところの筋肉を使うんですよ?日頃は意識しませんけどね。」
「・・・・・」
長いこと開けていなかった分厚いカーテンを開く。
外はもうすっかり秋だ。紅葉が朝日に照らされて綺麗だ。
朝食前に、部屋の模様替えを済ませる。
ベットは窓際に。ベットの足元近くに、執務用の長机を横にして置く。本当は手すりが理想だが、、、今だけだし。
長机の先に、食事用のテーブルと椅子を置く。椅子は頑丈な、両側に手すりが付いたものを運び込んでもらった。
「まず、ベットから足を下ろしてみましょう。」
側付きの騎士に上半身を支えてもらいながら、そっと足を下ろす。すかさず、背中部分に枕を詰め込む。
「足の裏が全部床についている感覚はございますか?」
「・・・ああ。」
「ではこのまま、いつもの運動をいたしましょう。上半身が安定しませんので、支えてもらったままですが。」
手を前に真っすぐ出して、グーパー。足の指は、床に着いたままでグーパー。これは一人で。
片足を伸ばして、足の甲の曲げ伸ばし。これは支えて。
「何事も、少しづつですよ?」
今日から早速、テーブルで食事をとるよう段取りする。
手すり付きの椅子なので、ぐらついてもある程度は大丈夫。座っている間に体のバランスを取るのもさりげない筋トレになる。まだ歩かせるのは不安なので、騎士に頼む。
「今日は椅子に座って、食事、そのあと、お茶も座ったまま。退屈でしょう?本とかご入用ならお持ちしますが?」
「・・・・いや、、、、、いい。」
別荘に来てから様子を見ているんだが、、、、どうも、、、、何の気力もないらしい。まあ、、歩けないかも、と言われた18歳の青年だと思うと、同情に値する?かな?
本当に歩けなかったとしても、残った機能はフルに使って、日常生活は送りたい、そう思うには、もう少し時間がいるか?
ジーク様は、用意した椅子に座り、難なく食事を始めた。
今日は、スクランブルエッグにフランクフルト、温サラダ、丸パン。ジャガイモの温かいスープ。ほぼ庶民の朝食のようだ。あっさりめにしてもらっている。
今頃、リーゼ様も同じ内容で、同じ量の食事を召し上がっているはず。
最初のころ、粥の少なさに涙ぐんでいたから、、、、いきなりは無理だったか?と、心配したのだが、ジークがこれしか食べないことに愕然とした涙だったらしい。
大公殿下には口出し無用と釘をさしてあるので、差し入れもない。
屋敷付きの侍女によると、毎日のようにケーキの差し入れがあったらしい。
「その差し入れを、美味しそうに食べるお嬢様を見るのが、旦那様の楽しみだったのです。」
そう、、、、そうして、白むちのお嬢さまが出来上がったわけだ。
大層かわいがって、あれは危ない、これは危ない、と、運動らしい運動もさせなかったらしいなあ、、、、ダンスの練習はジーク様とやっていたようだけど。
さて、、、、どうしたもんかなあ、、、、