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親友の約束


『もしもーし、ひかりどうしたのさ』


 家を出てすぐ、俺は響に電話した。

 きっと、響なら協力してくれると思ったから。


「ひなのが逃げ出してさ、探すのを協力してほしい」

 

 響はいつも、俺の為に協力してくれた。


「俺のせいで、ひなのを傷つけて、今母さんも探してくれているが響にも手伝てほしいんだ」


『嫌。って言ったらどうする?』


「一人で探す」


『……お前、俺との約束は憶えているんだろうな』


 約束。俺と響が出会った時に交わした約束……


***


「俺は、橘ひかり。お前は確か響だっけ」


 小学三年、クラス替えの時に響と同じくクラスになった。

 宮崎響、俺と同じ問題児で、何人か病院送りにしたとか……。


「ケンカは嫌い。ケンカしたいなら俺以外のやつにして」


 初対面で響はそう言った。


「俺もケンカ嫌い。仲良くなれそうだね!」


「お前、噂知ってるけど、ケンカばっかやってるらしいじゃん」


「俺は妹を守るためなら、何だってする。ケンカでもね」


「妹を守るため……」


 響は何も言わず、ただ静かに頷いていた。


「友達ならいいよ、ただ、お前の妹の為にケンカは手伝わない」


「もちろん! 俺もケンカ嫌いだし?」


 俺達は不思議な関係の友達になった。



 響は俺よりも狂っている。

 俺はひなのの為に、ケンカをする。

 けれど、ケンカ嫌いの響は何のために、誰の為に喧嘩をするのだろうか。


 響は、自分自身の為に喧嘩をしている。

 静かな学校生活を送りたい。ただそれだけで、自分の平穏を脅かす敵を殴った。


 響のお陰で、響のいたクラスには一切のいじめは起きなかった。

 響の絶対支配による教室は、感情のない教室となった。


 小学校に入ってすぐに一切の感情を奪われたやつらは何ともかわいそうだ。


 けれど、響は狂ってはいるが、悪いやつではない。


「俺はうるさいのは嫌い、夢の為にも勉強したい。その邪魔をしたら許さない」


「でも、もうそんなことする奴いないでしょ、このクラスでさ」


 俺と響は入学してからのこの時間でかなりの悪名が広がった。

 先生はどんな意図があってこのクラスにしたのか、それは分からない。


「でもさ、たまにケンカ売られてるよな」


 響はなぜか他学年に決闘なんかを挑まれている。

 全部ボコボコに殴り返してるらしいが。


「ケンカに道具を使ってはいけないなんて言われてないもんね」


 こいつのケンカは最悪。不意打ちで頭を狙う。

 しかも、道具を使って。一撃で。


 真っ向勝負の俺とは正反対なわけで……。


「なぁ、ひかり」


 唐突に響は言った。


「俺達、ケンカやめないか?」


「ケンカ、やめる……。別にいいけどひなのをどうやって守ってやればいいんだ?」


「もちろん、いきなりケンカゼロに出来ないのは分かってる。でもさ、少しづつ減らしていかない? 俺と一緒に」


「……いいよ、分かった。一緒にケンカやめよう」


 俺達は誓った。ケンカを辞めることを。


 *


 あの日から、響はケンカを一切しなくなった。

 それに比べて俺は、ケンカを無くすことはできなかった。


「それでも、先月より少しは減らせてるじゃん!」


 それでも地道に地道に、ケンカの数を減らしていった。


***


『あの約束には、もう一つ決めたことがあっただろ』


「互いが困ってるときは、絶対に助ける。ただ、貸し借りは絶対に作らない」


『そうそう。で、俺も協力してやる。その代わり、次に喧嘩をしたときは俺達の関係を終わろう』


「いい加減、ケンカを辞めれない俺に嫌気さした?」


『ま、そんな感じ』


「おけ、契約完了」


『俺は、どこ探せばいい』


「公園近くお願いしていい」


『うい。じゃあ、見つけたら連絡する』


 電話は切れた。

 本当にいい親友を持ったと思えた。


 俺は、また駆け出した。


 その先に……。

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