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決別の景色


 山の中腹にある、ほんの少し古びた外観のホテル。

 外観こそ古く見えるが、入り口の大きなガラスの扉から見える、エントランスは高級感のあり、扉の向こうは異世界のように見えた。


「一時間後まで、自由時間だけど、あんまり騒ぎすぎんなよ」


 篠崎先生は、頭をポリポリと掻きながら、話を続ける。

 修学旅行が始まる前から、篠崎先生はずっと修学旅行嫌だと嘆いていた。

 なんで、昼間だけでもめんどくさいのに、夜まで生徒の面倒見ないといけないんだと。そう嘆いていた。

 とはいえ、篠崎先生は生徒想いの良い先生だ。こうは言いつつ、仕事は真面目にやってくれるだろう。


「じゃあ、各自荷物をもって部屋に戻れ~」


 先生の言葉を合図に、みんなホテルの部屋に向かった。

 

「ひかり、部屋いこうぜ」


「そうだな」


 響の後ろについて部屋に戻る。


「あ、響」


「あい?」


「お前、見た目怖いんだから、笑顔でいろよ」


「あ~……。わかりました」


 篠崎先生が、先生とは思えないことを言ってきた。

 とはいえ、先生の言いたいことも分かる。


 響の容姿は、短髪のセンターパート。金色のメッシュを入れ、顔のいろんな所にピアスをつけている。

 その容姿は、学生というより、半グレだ。

 

 元から強面だったが、高校入学と同時に髪も染めてピアスを開け始めた。校則で、本来は髪を染めることも、ピアスも禁止だった。

 でも、こいつのお陰で多少の自由が利くようになり、髪は複雑で派手な髪色でなければ、問題がない。ピアスも二個までなら、大丈夫。

 ……響の場合、二個どころじゃないが。


 本来、生徒一人の為に校則が変わるなんて普通なら、ありえない。

 ただ、響はそれを実現したのだ。

 

「本来、学生がしていい見た目じゃないんだし、そこらへんは弁えとけよ」


「はーい」


 先生は、それだけ言うと、ホテルの奥に消えていった。


「……いこうか」


「そうだな」



 時間は、八時を過ぎたあたりだ。


 ホテルの一室。窓から覗く景色は、幻想的な世界を広げていた。

 街の明かりに、大きな橋。確か女神大橋だったか?

 海に浮か船の明かりも、全てがキラキラと、燦爛と輝いていた。


 高低差の激しい土地が、光に立体感を与える。

 地元の新潟では絶対に見られない景色。


 言葉を失い、ただ景色を眺めていた。

 

「……ひかり」


 響は、どこか気まずそうにこう言った。


「ひなの、悩んでいたよ。 ……お前のことで」


「知ってるよ、そんなの」


「なら、いい加減話してやれよ」


「分かってる、俺もそろそろ変わる頃だよな」


 空には、無数の小さな光を放つ星があった。

 その星は、風に流される雲に隠されて、消えてしまった。

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