決別の景色
山の中腹にある、ほんの少し古びた外観のホテル。
外観こそ古く見えるが、入り口の大きなガラスの扉から見える、エントランスは高級感のあり、扉の向こうは異世界のように見えた。
「一時間後まで、自由時間だけど、あんまり騒ぎすぎんなよ」
篠崎先生は、頭をポリポリと掻きながら、話を続ける。
修学旅行が始まる前から、篠崎先生はずっと修学旅行嫌だと嘆いていた。
なんで、昼間だけでもめんどくさいのに、夜まで生徒の面倒見ないといけないんだと。そう嘆いていた。
とはいえ、篠崎先生は生徒想いの良い先生だ。こうは言いつつ、仕事は真面目にやってくれるだろう。
「じゃあ、各自荷物をもって部屋に戻れ~」
先生の言葉を合図に、みんなホテルの部屋に向かった。
「ひかり、部屋いこうぜ」
「そうだな」
響の後ろについて部屋に戻る。
「あ、響」
「あい?」
「お前、見た目怖いんだから、笑顔でいろよ」
「あ~……。わかりました」
篠崎先生が、先生とは思えないことを言ってきた。
とはいえ、先生の言いたいことも分かる。
響の容姿は、短髪のセンターパート。金色のメッシュを入れ、顔のいろんな所にピアスをつけている。
その容姿は、学生というより、半グレだ。
元から強面だったが、高校入学と同時に髪も染めてピアスを開け始めた。校則で、本来は髪を染めることも、ピアスも禁止だった。
でも、こいつのお陰で多少の自由が利くようになり、髪は複雑で派手な髪色でなければ、問題がない。ピアスも二個までなら、大丈夫。
……響の場合、二個どころじゃないが。
本来、生徒一人の為に校則が変わるなんて普通なら、ありえない。
ただ、響はそれを実現したのだ。
「本来、学生がしていい見た目じゃないんだし、そこらへんは弁えとけよ」
「はーい」
先生は、それだけ言うと、ホテルの奥に消えていった。
「……いこうか」
「そうだな」
*
時間は、八時を過ぎたあたりだ。
ホテルの一室。窓から覗く景色は、幻想的な世界を広げていた。
街の明かりに、大きな橋。確か女神大橋だったか?
海に浮か船の明かりも、全てがキラキラと、燦爛と輝いていた。
高低差の激しい土地が、光に立体感を与える。
地元の新潟では絶対に見られない景色。
言葉を失い、ただ景色を眺めていた。
「……ひかり」
響は、どこか気まずそうにこう言った。
「ひなの、悩んでいたよ。 ……お前のことで」
「知ってるよ、そんなの」
「なら、いい加減話してやれよ」
「分かってる、俺もそろそろ変わる頃だよな」
空には、無数の小さな光を放つ星があった。
その星は、風に流される雲に隠されて、消えてしまった。




