変わらない景色にトラウマの思い出
飛行機の閉鎖的な空気から、解放され、長崎の地に降り立った。
長崎は、12月とは思えないほど温かく、上着を着ていたら、汗が滲んでくるほどだ。
「暑っ……」
新潟は、雪に包まれた真っ白な世界だった。でも、長崎は雲一つもない晴天で海も山も、雄大な自然が広がる。
「楽しみだね、ひかり」
「ん? そうだね~……」
ゆうなは、俺の顔を覗き込んで、フフッっと、笑った。
「そういえば、ひかりは中学の修学旅行ってどこ行ったの?」
「……長崎だよ」
「じゃあ、二回目なんだ」
「そうだよ、でも、中学の頃はいろいろあったからな~」
「色々って?」
「それは、まだ話せないかな」
「そっか、なら話せるときになったら話してよ」
「うん、分かったよ」
誰にも、話したくない、修学旅行の記憶。
思い出すだけで、絞めつけられるような、感覚に襲われる。
あの一件のせいで、俺達の関係は、大きく変化した。
ひなのは、事故に遭い、後遺症で左手に若干の麻痺が残った。
それだけじゃない。精神的にも大きな傷を残したはずだ。
ひなのにとって、この地は、トラウマになっているんじゃないかと、心配になる。実際、ひなのはどこか元気もなかったし……。
「バス来てるし、行こ?」
「そうだね」
バスに乗って、進む長崎の町。
上り下りの激しい坂を、進む。
右を見れば、海。左を見れば、山。
自然豊かな世界。その中に、十メートルを超えるかのような、大きな、ビル群。
自然と、人口物の合わさった景色は、どこか新潟に似ている。
でも、どこか新潟と一致しない。
植生や、建物の雰囲気。その一つ一つが、一致することのない景色。心はソワソワと焦燥感にあふれていた。
その景色は、中学の頃から、何も変わることがない。
「ひなの、大丈夫かな……」
気づけば、そう零れた。
ひなのとは、バスが違う。だからこそ、近くにいてあげれないから、落ち着かない。
「……」
ゆうなは、何も声を掛けることもなく、ただ窓の外を眺めていた。
いつもなら、その姿に見惚れてしまうだろう、その姿も、今の俺には届かない。
胸騒ぎがする。言葉にできない、ざわめきが、収まることなく、襲い掛かる。この修学旅行で、一体何がおこるのだろうか……。




