喧嘩ばかりの兄 臆病者の妹
小学校に上がったとき、私たちは別々のクラスになった。
別々の友達が出来て、一緒に過ごす時間が減っていった。
それに比例するように、ひかりは喧嘩をするようになった。
ひかりは、先生に怒られる度に、こういった。
「僕は悪くない。僕は約束したんだ」と。
どんな理由があったとしても、喧嘩をしたという事実は確かにある。
その事実は、回りまわって、私のもとに牙をむいた。
「お前、犯罪者の家族だ!」
喧嘩ばかりのひかりを、みんなは犯罪者といった。
私は、性格上あまり強く言い返すことはできなかった。
でも、ひかりがそう言われることに、強い怒りを覚えた。
そんな中、3年に上がるとき、クラス替えがあった。
クラスが変わってからは、いじめられることも減り、ひかりには、響くんという親友ができた。
響くんは、一体どんな人なんだろう。今まで喧嘩ばかりだった、ひかりは喧嘩をほとんどしなくなった。
それでも、月に一度ほど、ひかりは喧嘩をしていたのだが。
先生たちも、ひかりと、響くんの関係を知り、それ以降、クラス替えは、必ずひかりと響君は同じクラスになっていた。
そうして、その後は大きな問題もなく小学校を卒業した。
*
中学に上がった時、ひかりが、警察を巻き込んだ大きな喧嘩をしてしまった。
その中には、当時私が付き合っていた、彼氏がいた。
中学二年に上がるとき、中学で知り合った、男に告白された。
別に好きではなかったけれど、性格上断ることもできず、恋人の関係になってしまった。
ただ、それが良くなかった。
彼は、私の事を、愛していなかった。ただ、性の捌け口としてみていたのだ。私が断ることが苦手と知って、私に近づいたのだ。
ひかりは、私が迫られていた事を知っていた。
ひかりは、私のために本気で怒ってくれた。
彼を殴り、彼は入院。しかし、その後彼が学校に来ることは無かった。
嬉しかった。私のことを見てくれる人がいることを知れたから……。
でも、それと同時に心臓が張り詰めそうなくらい、辛かった。
私のために、ひかりは、人を傷つけている。
私のために、ひかりは、人生の選択を狭めてしまっている。
私の心には、迫られた恐怖と、ひかりへの罪悪感から、大きなトラウマが埋め込まれた。
ひかりは、私のために怒ってくれる。
でも、私は、ひかりのために、何ができる?
私は、自分を変える努力をした。
メイクも勉強して、髪型も整えて、ファッションも勉強して……。
性格も変えようと、努力した。
でも、容姿と違って、生まれつきの性格は、そう簡単に変わることは無かった。
そのたびに、ひかりに迷惑をかけて、心臓が張り裂け避けそうになった。
それでも、徐々に性格も変わっていった。
嫌なことは、嫌と言えるようになった。
自分の言いたいことを我慢せずに言えるようになった。
でも、それでも、まだ、男に迫られると、時々、トラウマを思い出し、動けなくなっていた。
そのたびに、ひかりが助けてくれた。
ある日の学校からの帰り道、ひかりとともに歩いていた。
「ひかり、いつもありがとう」
「……ん」
ひかりは、口数が少なく、何を考えているか、よくわからない。
でも、なんとなく、どんな人間かは知っている。
私たちは双子だから、きっと根本的なところは同じなんだ。
「ねぇ、いつも私を助けてくれてありがとう。でも、もう大丈夫だよ。私のことは私で何とかしたいの」
「……どうにもならないなら、頼っていいからな」
そう言って、ひかりは私の少し先を歩く。
きっと、感謝されて恥ずかしいのだろう。
それ以降、ひかりは、私が助けてというまで、手を出さないようになった。喧嘩も今まで以上に起こさないようになった。
でも、それは突然訪れた。




