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あと、一つ何かが足りない


「え~と、ひとまず皆さんの協力のお陰で、完成しました……」

 

 水曜日の午後の授業中。綾乃さんはそう告げた。

 文化祭まで残り数日という、タイミングだった。


「今から先にみんなで見てみない?」


 声を上げたのは間宮。

 それに続くように、皆声をあげる。


「はいはい。一回静かに。これを作ったのは永井だ。決定権は永井にあるんだぞ~」


 篠崎せんせーが、クラスの空気を整えた。


「永井。お前はどうだ?」


「感想も欲しいし、手直しする場所もあるかもしれないから……」


「私の作品を、見てください!」



「綾乃さん」


 放課後の教室に、一人。彼女がいた。

 授業中に見た、あの動画。クオリティも高くて、見ごたえがあったけど、クラスメイトの反応はいまいちだった。原因は、おそらく


「柊くん」


「ラストの部分修正してるの?」


「うん。もともと、不安だったんだあそこ。」


 笑っているけど、どこか辛そうだ……

 でも、なんて声を掛ければいいか、分からない。


「綾乃。帰るぞ、これ以上遅くなると心配かけるぞ」


「もう、そんな時間か、柊くん、また明日ね」


 間宮と並んで、帰る綾乃。

 さっきより、少し表情が緩んでいる……。

 あれは、俺が入るべきじゃないのかもな。



「柊のやつ、心配してたぞ」


「……わかってるけどさ、なんて答えればわかんなくてさ」


「こんど、ありがとうぐらい言っておけよ?」


「うん。わかってる」


 帰り道。私たちは二人で歩いていた。

 

 収穫が終わり、等間隔に並べられたひこばえ

 妖艶な桜色に染まった空

 体を刺す冷たい秋風

 二人を照らす、沈みかけの山に架かる夕日


 たった一瞬の無言の時間さえも、どこか心地いい。


「私、文化祭が終わったら。やりたいことがあるの」


「やりたいことって?」


「まだ、秘密。知りたいなら、文化祭楽しませて?」


「じゃあ、一緒に文化祭回るか?」


「いいね、それ」


 二人は約束を交わして、それぞれ別の帰路についた。

 

「柊君からだ……」


 家に着くまで音楽でも聴こうと思って取り出したスマホには、柊からメッセージが来ていた。


「なるほどね~」


 それをみて、少し心が躍るようだった。

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