あと、一つ何かが足りない
「え~と、ひとまず皆さんの協力のお陰で、完成しました……」
水曜日の午後の授業中。綾乃さんはそう告げた。
文化祭まで残り数日という、タイミングだった。
「今から先にみんなで見てみない?」
声を上げたのは間宮。
それに続くように、皆声をあげる。
「はいはい。一回静かに。これを作ったのは永井だ。決定権は永井にあるんだぞ~」
篠崎せんせーが、クラスの空気を整えた。
「永井。お前はどうだ?」
「感想も欲しいし、手直しする場所もあるかもしれないから……」
「私の作品を、見てください!」
*
「綾乃さん」
放課後の教室に、一人。彼女がいた。
授業中に見た、あの動画。クオリティも高くて、見ごたえがあったけど、クラスメイトの反応はいまいちだった。原因は、おそらく
「柊くん」
「ラストの部分修正してるの?」
「うん。もともと、不安だったんだあそこ。」
笑っているけど、どこか辛そうだ……
でも、なんて声を掛ければいいか、分からない。
「綾乃。帰るぞ、これ以上遅くなると心配かけるぞ」
「もう、そんな時間か、柊くん、また明日ね」
間宮と並んで、帰る綾乃。
さっきより、少し表情が緩んでいる……。
あれは、俺が入るべきじゃないのかもな。
*
「柊のやつ、心配してたぞ」
「……わかってるけどさ、なんて答えればわかんなくてさ」
「こんど、ありがとうぐらい言っておけよ?」
「うん。わかってる」
帰り道。私たちは二人で歩いていた。
収穫が終わり、等間隔に並べられたひこばえ
妖艶な桜色に染まった空
体を刺す冷たい秋風
二人を照らす、沈みかけの山に架かる夕日
たった一瞬の無言の時間さえも、どこか心地いい。
「私、文化祭が終わったら。やりたいことがあるの」
「やりたいことって?」
「まだ、秘密。知りたいなら、文化祭楽しませて?」
「じゃあ、一緒に文化祭回るか?」
「いいね、それ」
二人は約束を交わして、それぞれ別の帰路についた。
「柊君からだ……」
家に着くまで音楽でも聴こうと思って取り出したスマホには、柊からメッセージが来ていた。
「なるほどね~」
それをみて、少し心が躍るようだった。




