俺、スリーポイントシュート決めたことない
「じゃあ、いまから、撮影を始めます」
少し、肌寒さも感じる体育館。そのなかにいるのは8人の男女。
今から文化祭用の動画の撮影だ。
「とりあえず。俺とゆうなさんにカメラつけるから、適当に男女二人づつのチームに分けようか」
俺達は制服姿でスポーツをしているシーンが欲しいのだという。
だからひとまず今からみんなで4対4でバスケをすることになった。
まあ、みんな軽く楽しもうぐいらいだったのだが、開始5分ほどで、俺は本気になった。
と、いうのも
「お前、そんなんじゃ勝てないよ」
なんて、煽られたもんでな。ゆうなさんもいるし、いいとこ見せないとな。
そこから始まったのは男たちの本気のバトル。
女子は所々でサポートに入ってくれるがもうほとんど蚊帳の外だ。
しかし、そんなの今の俺たちに見えているわけもなく……
*
高速のパスに、敵をすり抜けるドリブル。
漢のガチバトルに置いて行かれる女子……
点差は4対6。勝ち目はある。
しかし、残り時間はもう1分もない。
均衡する実力の中で後、二回シュートを決めるのは不可能だ。
なら、スリーポイントシュートで決めるしかない。
問題は、俺、スリーポイント決めたことがないということ……
ペアの男子はガッチガチのガードでパスを渡せる状況なんかじゃない。
つまり!俺のこのシュートですべてが決まる。
深呼吸をして、右足で床を踏み抜く。
高く飛んで、最高到達点から、放物線を描くようにシュートを放つ。
それは、ゴールリングの上をはねて、リングの内側に落ちた。
7対6
逆転。そして、残り時間は30秒。勝てる!
と、思ったのに……
「へい! パース!」
コートの端から放ったパスは、俺たちのコートのゴール下にいた、ゆうなさんのもとに……
「ラッキー」
そのまま、ゆうなさんのシュートが決まった。
そして、試合終了。
7対8
俺達は負けた。
「まじかぁ……勝ったと思ったのに……」
「でも、いい動画撮れたんじゃない?」
ゆうなさんは、カメラを取り出して、動画を確認していた。
そこに映っていたのは、笑顔でバスケをやっている俺たちの映像。
ま、負けたけど、いい映像撮れたし、結果オーライ