第75話 おつかれシルヴィア
エドワードはシルヴィアを抱き上げると、ノマーニに告げた。
「ちょっと無茶をしたと思うので、これでシルヴィア様は引き揚げる。ノマーニはここに残り、どう変わったか確認を頼む。確認のため数名残していいが、残りは警備のために戻ってこい。確認を終えたらノマーニも引き揚げ、ローテーションを組んで居住する準備を行うように。くどいようだが、家族は必ずシルヴィア様に面会させろ。勝手に住まわせることは絶対にするなよ。また、勝手に住んでいる奴は誰であれ捕まえろ。これは、命令だ」
「承知いたしました」
ノマーニは頭を下げた。
エドワードは、シルヴィアに牛車の中で眠っていてほしかったが絶対に嫌がるだろうなとわかったので、乗ってきた馬に声をかけた。
「……仕方ないから、俺はシルヴィア様の牛車でいくよ。お前はついてきてくれるか?」
馬は了承した、というように鳴いた。
「シルヴィア様、帰りは俺が牛車を引いていきます。シルヴィア様は休んでください」
「ん!」
シルヴィアは、エドワードにしがみつきながらご機嫌にうなずいた。
魔術をがんばってよかったな、と思いながら。
「ジーナかエンマについてきてもらえばよかったよ」
城塞に着いて、出迎えたジーナにスヤスヤ眠るシルヴィアを渡しながらエドワードはぼやいた。
「エドワードにさえ止められないのに、私にどうしろと……」
ジーナはシルヴィアを受け取り抱っこしつつ答えると、エドワードが苦笑した。
「二人がかりなら止められるかもしれないだろう? ジーナがシルヴィア様に泣きつく、エンマがシルヴィア様を叱る、どちらも効果的だ」
ジーナも苦笑した。
今回、ジーナたちは侍女の勉強のために同行しなかったのだ。
いよいよ家庭教師である侯爵令嬢がやってくる。
ジーナもエンマもずっとダフネとロミーに特訓を受けていた。
「無事ならいいじゃないですか。新しく雇った人たちにいいところを見せたかったんですよ」
ジーナがそう言うと、エドワードも同意した。
「確かに、本気で褒め讃えていた感じはあるかな」
シルヴィアの魔術で支配されているとはいえ、あの魔術は嘘が言えない等の縛りはいっさいない。
だから社交辞令で褒めていた可能性はあるのだが、まさか、どのくらいかかるかわからない作業を主が一瞬でやってのけたのにそれに感動も感謝もしないような人間性ではないと思う。
エドワードが感じた通り、ノマーニたちは本気でシルヴィアに尽くそうと思い、それを態度で示した。
ノマーニたちは夕方にはほとんど引き揚げてきて、まずベッファに礼を言った。
「あのときお前を助けてよかったと今日、心から思った。一同、シルヴィア様に引き合わせてくれたお前に感謝している」
ベッファは驚き、その後頷いた。
「俺も、あのとき侯爵家へ戻るように諭してくれたことに感謝しているよ。そのおかげで、ここへ間諜として送り込まれ、素晴らしい主のもとに仕えられたからな」
ノマーニは笑った。
「助けたことじゃなくてソコかよ。ま、確かにそうだな。他の誰かが助けたなら、お前は違う道を歩みシルヴィア様には出逢えてなかっただろう。俺たちもだ」
互いに頷き合った。
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短くて恐縮です。4月になったら再開すると思いますのでご容赦ください!




