第74話 集落リノベーション
『城塞幼女シルヴィア』再書籍化が決定しました!
ノマーニたちの乗る馬を仕入れたので、いよいよ集落を作る辺りへ移動することになった。
シルヴィアは牛車で御者台に座り手綱も握らず「しゅっぱーつ!」と牛に指示を出しているが、それを誰も笑わない。
ノマーニたちも、シルヴィアが普通ではないことを悟ったのだ。
貴族としても普通ではないが、人としても普通ではない。
大人たちの傀儡でもない。守られているわけでもない。
本気で讃えられているのも理解した。
ナルチーゾ族の集落があったという海辺の近くへ着くと……なるほど、家屋の廃墟らしき瓦礫があった。
ノマーニたちは実際に住んでいたわけではないので、物珍しさであちこち見て回っている。
エドワードはシルヴィアを御者台から下ろし、辺りを見回す。シルヴィアも真似をして辺りを見回した。
エドワードは、天井が崩れ壁が壊れ瓦礫となっているさまを見ると、頭をかいた。
「うーん……。本当に住むのか? こりゃ、建て直さないと難しいぞ。俺としては宿舎のほうが楽だと思うがな……。言っておくが、ここを整備したいから仕事を休ませてくれ、ってのはナシだからな。本末転倒だ」
釘を刺すと、ノマーニたちはうなずく。
「当たり前ですから、そんなことは言い出しません」
「休みの日にぼちぼちと整え、ある程度住めるようになったら家族を呼び――」
「私がやってあげるのです!」
シルヴィアが割り込んで言い出した。
「「「え」」」
ノマーニたちは意味がわからずキョトンとする。
シルヴィアは興奮したようにまくしたてた。
「こんなの、チョイチョイとできるのです! 私にはたやすいことです!」
全員、啞然として口を開けシルヴィアを見つめた。
エドワードは我に返り、困った顔でシルヴィアを説得にかかる。
「ですが……。けっこうな広さですし、かなり魔力を使うのではないでしょうか? ここを指定したのはもともと彼らです。自分たちでやらせるのがいいかと……」
「私にはたやすいことです!」
「あかん」
魔術を見せつけたくて仕方がない、といったシルヴィアに、エドワードはさじを投げた。
「ハァ……。……シルヴィア様が魔術でここを整備してくださるそうです。……終わったら、シルヴィア様を讃えてください」
エドワードが疲れたように言った。
ノマーニたちは、何を言ってるんだ? という顔でエドワードを見た。
エドワードは、シルヴィアを指し示して再度ノマーニたちに告げる。
「いいから見てろって。度肝を抜かれるから」
注目されたシルヴィアは、フンスフンスと鼻息高らかに前へ進み、詠唱した。
「いきます! 『従者たちにふさわしい場所として、もう一度その姿を現せ――【改修】』」
シルヴィアが地面をステッキで思いきり突いた。
――圧巻だった。
瓦礫と化していた建物が、時間を巻き戻していったかのようにかつての白い家の様子をとりもどしていく。
建物だけではなく、雑草が生い茂り自然に帰りつつあった集落が、一気に人が暮らしていた面影を残す場所へと変わっていったのだ。
ノマーニたちは、呆けて変わっていくさまを眺めていた。
「……できました! けっこう広範囲だったので、がんばりました!」
ふぃー、と息を吐いて汗を拭うシルヴィアを、エドワードが慌てて支える。
「あまり無茶をしないようお願いいたします……」
「ヨユーなのです!」
フンッと力むシルヴィアの前に、ノマーニたち全員が膝をつき、頭を垂れ、感謝の意を捧げる。
「……さすがです、シルヴィア様。我が主よ。我ら一同、ここに居を構え、生涯をシルヴィア様に捧げ尽くすことを誓います」
「ん! はげむのです!」
シルヴィアはノマーニたちに讃えられ、満足そうにうなずいた。
ちゃんとお仕事をしたのです! きっとエドワードもほめてくれるのです!
前書きに書きました通り、『城塞幼女シルヴィア』、再書籍化することになりました!
レーベルはGCノベルズ様です。
ビックリですよね?
すぐに打診の連絡が来たのもビックリしましたが、そもそもお声がかかること自体がビックリで、さらにはGCノベルズさんからお声がかかったのにビックリ。ビックリの三重奏でした!!
ちなみに、まだGCノベルズさんで再書籍化しますってことが決まった程度です。
「決まったことを大々的に告知していいですよ」という許可を得まして、大声で宣伝しておりますw
作者としては、ひたすら書くしかないので、前書籍を買った方も後悔しないような内容にしていきたいと思います。つまり、シルヴィア成分を、足す!!
まだ着手していませんが、頑張りますね~。
web版は改稿作業のすき間に入れていきますが、結構大変なことになりそうなので頻度が少ないと思います。
今回のように短めのお話を空いた時に入れていければ……と思っていますので、よろしくお願いします。




