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第73話 一族の住み処

 ノマーニたちは南の砂浜のある辺りの場所を住み処に希望した。


「我々は、ナルチーゾという一族です。血が強いのか、なぜか男ばかりでしかも父親似になるんですよ。顔を見ればすぐ一族の者だとわかります」


 ノマーニはそう語るのだが、正直特徴のある顔をしていないのでわからない。

 体つきが似ている……のかもしれないが、筋骨隆々としている男はどれも同じだろう。

 と、エドワードは聞いて思った。シルヴィアは聞いているのかいないのか、ボーッとしている。


「移動は、どうにか馬を手に入れます。それで、集落と行き来しますが、基本は、城塞勤めの者たちは城塞に住み、非番のときに帰る、というふうにしたいと考えています」


 エドワードはうなずき、シルヴィアに言った。

「いいんじゃないかと思います。馬も買い与えましょう。……ですが、シルヴィア様の連れてきた家畜たちの了承を得たほうがいいですかね?」

「ん? だいじょぶだと思いますけど、聞いときます!」

 シルヴィアがうなずいた。

 ノマーニは『家畜に聞く?』と内心首を傾げたが、礼を言った。

「ありがとうございます。――それと、家族のいる者の件ですが……」

「それは、さっきも言った通り、シルヴィア様を敬う者、そしてシルヴィア様が面会して了承を得た者のみだ。これは、絶対だ。……ま、お前らがシルヴィア様の意に反することをするとは思えないけど、念を押しておくよ」

 エドワードは再度告げた。

 先ほど広場に集まった者はシルヴィアを敬っているのだろうが、家族まではわからない。

 特に集落になるとしたら、シルヴィアの魔術を受け入れられなければ、絶対に認められない。


 ノマーニたちは、ひとまずは集落へ行かず、そして今住んでいるところにも戻らず使用人部屋で寝泊まりして警備や稽古をすることにした。

 全員、思った以上に広場が気に入ったのだ。


 ノマーニたちの稽古を見たエドワードは、

「思ったよりできるな」

 と、感心した。

 少なくとも、前回程度の賊なら、家畜たちの手を煩わせなくてもノマーニたちだけで戦えそうだった。

 さらに、エドワードが軽く指示を飛ばすと、すぐに理解し即座に行動する。

 エドワードは即戦力になりそうだと考えカロージェロとベッファに相談し、ノマーニたちに城塞の内部を案内し定期的な巡回を頼むことにした。


 エドワードの見込み通り、ノマーニたちはきっちりこなす。

 エドワードはさらに騎士としての礼や作法を叩き込み、ある程度形になった三名をシルヴィアの護衛騎士としてつけることに決めた。

 自分が護衛騎士としてそばにいることは現状難しい。

 落ち着いたら常にそばにいようと思うが、今その任につけないのなら誰かに任せるべきだと考えた。

「マティルデ、マルツィオ、サロモネ、シルヴィア様をよろしく頼む」

「「「はっ!」」」

 感激したような表情の三人は胸に手を当て、拝命した。


 馬は、ベッファが買い付けてきた。

 広場に馬を入れると、シルヴィアと、そして家畜たちもやってきた。

「『私が城主で、あなたがたの主です、【支配(ドミナント)】』」

 まず、シルヴィアが魔術を放つ。

 すると、馬たちはすぐに従順になった。

「よろしいですか! コイツらは先輩だから、先輩の言うことをきくですよ!」

 シルヴィアが家畜たちを指し示しながら言うと、馬たちが鳴いて同意した。

 その光景を見て、ベッファは涙し、カロージェロは祈りだし、ジーナは手を叩いて褒め、エドワードは、「あー……。シルヴィア様の魔術のせいかー……。コイツらがおかしなことになってるのはー……」と遠い声で呟いていた。


 護衛騎士として控えている三名も啞然としたが、その後「さすがです! シルヴィア様!」「馬を一瞬で手懐けましたね!」「素晴らしい!」と褒めたたえ、シルヴィアはフンス、と鼻を鳴らして反り返った。


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― 新着の感想 ―
残念ですが確かに任せておけないとなっても仕方ないですね 気を長くお待ちしてます
残念なお知らせに、サエト様の心中いかばかりかと存じます。 作品は素晴らしく、出版社の様々な都合もあるのでしょうが、それが物語の価値を下げるものではありません。 またシルヴィア様たちに会える日を心から…
この物語がとても心地よくて好きなので、しっかりと休んで十分に癒えてからいずれまた再開されることを願っています。 これ以上傷が広がらないうちに自ら損切りされたご判断、決断力を尊重します。
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