表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~(web版)  作者: サエトミユウ
10章 料理人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/108

第106話 遠い目をする二人

 ディエゴの泣き言を聞き呆れるデボラと怒れるガストンに対し、カロージェロが諭すように言う。

「お二人とも、気持ちはわかりますがディエゴさんのところへ行くのはやめてください」

 二人がカロージェロを見る。

「何をやっているんだと叱り飛ばしたい気持ちでしょう。励まし支えてやりたいとも思うでしょう。ですが、お二人はもうこの城塞の……貴族に雇われた料理人なのです。契約書には書かれていないでしょうが、貴族に雇われた以上、貴族……つまりシルヴィア様の意思で決まります。シルヴィア様が平民のお二人にここで働くよう命じたとしたら、断れません。それをまずは念頭においてください」

 カロージェロの話を聞いたガストンは怒りを冷ましうなずいた。デボラも真剣な顔でうなずく。

 カロージェロは、さらに二人に話す。

「もし、ディエゴさんがここで働きたいというのでしたら、それは認めましょう。ただ、戦力にならないうちに辞めるのならばともかく、戦力として認められた場合は簡単に辞めることができません。その場合、代々続いてきた料理店を潰すことになります」

 ガストンがぐっと詰まった。

 ガストンとしては、今すぐ料理店に戻り息子を張り飛ばしてしごき直してやりたい気持ちだ。

 半人前の腕前のくせに師匠であり親でもある自分を追い出し嫁を呼び寄せたくせに、その嫁にまた逃げられて店を閉め、さらには戻ってきてほしいとは何事だと怒鳴りたい。


 だが、できないのだ。

 カロージェロの言うことを理解しているから。

 料理店は大事だ。自分の代……正確には息子の代で潰すなんてあり得ない。

 あり得ないが、『貴族の料理人である』というプライドもある。


 デボラだけではない、ガストンだって密かに悔し泣きしていた。

 さらには『娘の師匠』というプライドもあり、絶対に負けないと挑んできたのだ。

 そして、その成果は今料理に現れている。

 隣国の、美食を食べ慣れている貴族様に『おいしい』と言われた、その言葉で今までの苦労は報われ、さらには自分が料理を作らなければ誰が作るのだという気持ちでいる。

 デボラと二人でも大変だというのに、ガストンが一時の感情で料理店に帰ることは絶対にできないのだ。


 カロージェロが俯く二人に向かって言った。

「ですので、幾通りかの案を提示します。とは言っても、たいした案ではありませんが……。その案がうまくいけば、料理店を潰さずにいけるかと思います」


 まず、城塞の料理人が二人というのはいくらなんでも厳しい。

 倒れられたら全員の食事が止まる。

 城塞で働く人数も増えてきているし、休みなく働いている二人なのだ。

 なので、どうにか料理人を育ててほしいと頼んだ。

「最初は皿洗い、皮剥き、それも無理なら床掃除でもかまいません。下っ端から始めて、長い目で見て一人前……は無理でも半人前くらいに仕立てあげる心構えで指導していってください。私も募集のしかたが悪かったため、あまり良い人材が来なかったのをお詫びします。次からは、覚悟を持った少年少女を集めますので、指導していってください」

 カロージェロの言葉を聞き、ガストンとデボラは困った顔をする。

「……怒鳴るのをやめろ、っつわれても困るんだよな……」

「あたしも、そんなつもりじゃないんだけどね……」

 カロージェロが二人を制す。

「そこは気にしないでください。エドワードさんいわく、『そんなちょっとしたことで辞めるような者は最初から使い物にならないんじゃないか』ということです。騎士団の指導はもっと厳しいそうなので、お二人は思うがままにやっていただいて結構です」

 それを聞いた二人は顔を見合わせた。

 二人とも『だからエドワードさんは笑顔で厳しいのか』と思ったのだった。


 カロージェロは、ちょっと逡巡したが二人に考えを伝える。

「また、ディエゴさんを呼ぶことには賛成します。ただし、即戦力を期待しているので下拵え等のサポートで雇うことにしてください。二人と並び立てるような指導はしないでください。ディエゴさん本人がお二人を見て反省し努力するのはかまいませんが、それがなく、ただただサポートを行うのみでしたら、どう足掻いてもディエゴさんが料理店を再興できるとは思えません。その場合は、ガストンさんが引退した暁にディエゴさんの子ども……ガストンさんの孫をひきとって料理店の後継として育てたほうが、まだ可能性があります」


 ガストンとデボラが遠い目になった。

 ……それは、そうとう先の話だ。

 そして、末っ子同士がくっついて産まれたその子が、ガストンのしごきに耐えられるのか。

 そもそもが、ディエゴとエリサは結婚する気があるのだろうか。

 舅と小姑を追い出して居場所を作った男を見捨てて実家に帰るような娘が、啖呵を切って追い出したにもかかわらずうまくいかなかったと追い出した相手に泣きつく息子と今後も仲良く暮らせるとは到底思えない。

 どちらも相手に甘えようとし、それができずに失望して別れる気がする。というか、結婚しないんじゃないかとガストンとデボラは考えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2か月連続刊行! 2026年1月30日 GCノベルズより発売
城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~2


著者: サエトミユウ / イラスト: ハレのちハレタ



― 新着の感想 ―
裁判のころから思ってはいたけど、貴族の権力ってのは民主制を知ってる身としてはえげつないですなぁ 人格性格は育ちで決まると思ってるので、小さい頃から慣れさせれば指導についてこれるとは思う。まぁ時間がか…
何人も弟子を育て上げてから店を任すとかでも十年先かな。まあ建物さえ残ってればシルヴィアが改修出来るけどね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ