第104話 デボラの弟のこと
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ミックから、デボラの弟の顛末を聞いたベッファは、考えながら顎をなでる。
「私は、さほどデボラさんと話したことはないんですけど……。ただ、彼女から料理人としてのプライドを感じます。ですので……デボラさんが弟さんの話を聞いたとしても、同情して入れ替わることはないと思いますよ。ただ、激怒するとは思います」
ミックが驚く。
「いやでも、デボラって、好きな男性を幼なじみに譲ってしまうような女性なんですよ? そもそもが、デボラが店を継ぐって誰もが思ってたのに、弟が恋人を妊娠させてしまったからって店まで譲ったんです。なら、今度は城塞の料理人を弟に譲るかもしれない……。そう思いませんか?」
ミックがそう言うと、ベッファが首を捻る。
「私としては、デボラさんが『シルヴィア様の料理人』という仕事に対して、それほどに軽くは考えていないって思うんですけどね……」
「あ、それはそうですね。――でも、お人好しって、驚くほど簡単に譲るから。デボラは大丈夫かなって思ったんです」
ベッファは、シルヴィアの料理人としてのデボラしか知らない。
だが、その部分では彼女は非常に意欲的で真摯に料理と向き合っている。
元は町の料理屋の娘だという。
貴族の料理なんて作ったこともないだろうに、エドワードとカロージェロから通常なら心がへし折られるであろうほどの指導を受け、それでもやめなかった。
さらには同年代の少女より細く小さいシルヴィアにおいしいものを食べてもらいたいと試行錯誤し、ベッファにも、隣国の侯爵家ではどんな料理が提供されていたか知っていたら教えてくれと頭を下げてきたのだ。
そこまでして学び習得したというのに、甘ったれた弟の泣き言を鵜呑みにして交換するとは思えない。
そして、その甘ったれた弟がデボラ以上の腕前になるとも思えない。
ベッファはそう判断したが、自分の一存でどうにかするつもりはない。
「カロージェロさんとエドワードさんに一応は相談します。場合によってはシルヴィア様にも話を通します。……あと、伝言は私から伝えますよ。ミックさん、ありがとうございました!」
ミックは手を横に振る。
「いいえ。俺としても、なんか腹が立っちゃって……つい頼ってしまいました。――お前が追い出したんだろ! もうデボラは超立派な料理人なんだから、お前は自分で自分をなんとかしろよ! ……って思っちゃって。あ、俺、デボラの弟と同い年なんですよ。アイツ、恵まれてるのがわかってなくて、始終親父が怖いだの姉貴が怖いだのブツクサ言ってたから、つい。俺なんて、手に職なしの荷運びくらいしかできない男なのに」
ミックの愚痴にベッファが笑う。
「荷運びだって城塞では重要な仕事です。ミックさんがやらなければ誰がやるって言うんです? シルヴィア様なら魔術でやってしまいそうですけど!」
ミックが苦笑した。
「確かに、岩も運べますからね、シルヴィア様。……うん! 俺はシルヴィア様ほどじゃないけど、でもシルヴィア様の負担を減らすことはできるって思うと気分が上がる! ……そっか、俺も城塞を支えるメンバーの一員なんだ」
「当たり前ですよ。私だってそうです。今支えているメンバーが減ると他の全員が大変になるのですから、互いにその自覚を持ちましょう!」
ベッファがうまく励まし、そしてカロージェロとエドワードに聞いたことを報告しに向かった。
*
「何言ってんだソイツは」
ベッファからの報告を聞いたエドワードは呆れた。
カロージェロも呆けたが、考え込む。
「デボラさんの弟というと……ディエゴさんでしたか。普通の青年といった印象でした。ただ、ちょっと流されやすいのと、デボラさんがしっかりしていて店を継ぐことになっていたので、料理に関しては本腰を入れずやっていた雰囲気でした。でも、料理人の息子でしょう? 店だって譲られたのだから、料理に関してもっと厳しく捉えていると思っていたのですが」
料理は、ただの栄養補給ではない。
特に貴族では、外交の要になったりする非常に重要な役割だ。
元貴族でその重要性を知っているエドワードは当初、忙しくなった自分の代わりに町の住民の誰かに賄いをお願いし、本格的に隣国との外交が始まったら隣国から貴族の料理人を探そうと考えていた。
ガストンとデボラはそのつなぎとして考えていたのだが、二人の腕前が思った以上だったのでエドワードは二人を試した。
カロージェロはそもそも二人を鍛える方向性だろうと思っていたので、エドワードと一緒になって教え込んだ。
カロージェロは二人を知っていて、料理に対する情熱を理解していたからだ。
なので、エドワードとカロージェロの期待に応え見事貴族の料理人の腕前となったガストンとデボラの身内に、そんな甘くて軽い考えをする者がいるとは信じられないのだった。
「二人とも人手はほしいでしょうから、入れ替わるのではなく下っ端の料理人として雇ってほしいというのなら、受けますが」
と、カロージェロが続けた。
下働きは何人でもほしいと言われていて何人か入れているが、二人が厳しすぎてすぐ辞めてしまうのだ。
いや、あんなので厳しいと言われると困る、とエドワードは思う。
エドワードが近衛騎士団にいたころは、怒号は当たり前、罰を受けさせられることはしょっちゅうで、殴られたり蹴られたりすることもあった。
口答えは絶対に許されず、やったことをやってないことにされたり手柄を横取りされたり指示を受けてないのになぜやらないと罵られたり、もっと理不尽で厳しい扱いだったのだから。
ガストンとデボラだって、エドワードから笑顔で何度も「ダメですね。作り直してください」と言われ、歯を食いしばりながら何度も何度も作り直してきたのだ。
それよりは、怒鳴り声だろうがちゃんと指導しているガストンとデボラのほうが優しいだろうとエドワードは考えているが……。
「下働き希望者は、貴族に仕えるってのを甘く考えているのかな」
エドワードがつぶやくと、カロージェロとベッファが同意した。
ちょっと遅刻しましたが更新しました!
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