鮮明というばかりの現実
夢によって
紫陽花の感電した滲みを
空に見る
夜空の黒い被膜を内側より照らした
青色は
私の目の内に蓄えられた青という現象を
混じり気無くして増大したもので
これもまた長く続かないとは
分かっていたが
だからこそ
その時私は皮肉的なカメラを持ち出して
意味の無い
記録を望んだ
朝、いつの朝であったか。家の近所に砂漠が有ったことを最近知った。チョロチョロと音を立てていた用水路はフェンスに囲まれていたはずであるが、例の如く知らぬ間にそこへ降り立っていた。
兎はいなかったが、子供の頃に妹がそこへ落ちたという様なことは有った気がしている。だから何だと言ってくれるな。たった今それしか思い付くことの無かった訳である。
次第に鮮明になって、今度は私の話である。今朝幽霊に触られて悲鳴を上げたかと思えば、知らぬ間に除霊は完了していて、知らぬ間に眠りを頂戴していたことを思い出した。或いは裸足で抜け出して、人目を憚るどころか人目を探して駆け回った結果であると言ってくれれば私は納得しただろう。
それで以て私は泥だらけであると勘違いしてくれたなら尚良い。私は着衣泳が好きだった。それだから今無事に砂漠をそれらしい格好で漂流しているのであった。たったそれだけのことである。もうすることが無い。幽霊もいなくなったから、私は帰る。




