荒れた城
重い扉が開けられ、フードを被ったコート姿の影がふたつ、城へと入る。
ノーム種族のジャックが住まわっていた頃とは比べられないほど、荒れた印象の中を通る。
キラ種族のホーリーが住みだしてから、言語をあやつれないほど低俗な小型の魔族や小鬼族がすみつき始めた。
それらが、突然の訪問者に戸惑ったように柱の影や天井へと逃げまどう。
二つの影はそれを意に介さず、進んでゆく。
先をゆく男が、ジャックのいたころの城を思い出し、顔をしかめた。
「――― 主が変われば、ここまで様変わりする。いいか?この世界も同じことだ。空の目の考えることはわからないが、とにかく、おれたちがどうにかするしかないんだ。わかるか?」
「・・・・・・」
後ろに従う小柄な影が黙ったままうなずく。
それを確認するでもなく、先を行く男は続ける。
「この世界を、キラ種族になぞ支配されてたまるか」
近くの壺を蹴りあげ壁にあたってくだける音と子鬼の悲鳴が重なった。
『――― だれだ?』
「っ!?」
突然響いた低い声にフードの二人はあたりを見回す。
柱にかろうじて残った燭台に揺れる炎がいきなり巨大なものとなり、フードの中の顔を照らすように二人を囲んだ。